アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
七夕企画①
-
今日は七夕ですので、少し時間を戻して七夕のお話をさせて頂きます。読まなくても本編に支障ありません。
楽しんで頂けたら幸いです…
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「さーさーのーはーさーらさらー♪ パンダーがよれーるー♪」
「…真帆ちゃん…歌詞がなんかちょっと違う気が…」
「ママ~、ぼくの短冊、上の方に付けて!」
「パパに頼んだら? 真尋くん」
「お、パパが上の方に付けてやろう!」
「……ママの方が背が高い…」
「…真尋! ヒドイ! パパはスゴイ傷ついた! 家出してやる!」
「……子どもじゃないんだから…」
「真白くんは、もう少し、子供っぽくなろっか!」
真白は広いベッドの上で目が醒めた。
今日は七夕だからだろうか…?七夕を家族で楽しんだ思い出の夢を見るなんて。子どもの頃、たまたま両親が七夕の前の日に帰国して、本当に久しぶり家族全員揃った。七夕の為に笹を用意して、短冊にそれぞれ願い事を書いた。自分はあの時、どんな願い事を書いただろうか?さすがに覚えてない。
真白は、よいしょっと体を起して、出社のために準備にとりかかる。ここは佐伯の家だが、家の主は留守だ。佐伯家の親戚の集まりで地方に行って昨日からいない。明日、帰ってくる予定だ。佐伯の留守の間、真白は家の留守番を頼まれた。だが実は、佐伯は真白に悪い虫が付かないようにしていただけだった。佐伯が遠くにいる間に、もしかしたら一人暮らしの真白は、無防備に誰かを家に上げて何かあるかもしれない。何かあってからでは遅い。そして真白には留守番を頼むという表向きの理由をつげて、臍を曲げられない様にしてある。
広いし綺麗だし快適だし…自分の部屋とは大違いの佐伯の部屋は、朝日を窓から燦々と降り注ぐ。リビングをぐるっと見回し一つ無意識に溜息を吐くと、真白は顔を洗いに洗面所へ向かった。キッチンで、トーストと牛乳を胃袋に収め、身なりを整えて、佐伯の家を出た。
「はぁ、はぁ…お、おはよう、ございます…」
「おはようございます。山村さん」
「山村、走ってきたのか。ダイエットか?」
「まさか! 朝ごはんを有名な店で並んで食べたんですよ! そしたら時間ギリギリ!」
そういうと、山村は今日行ってきた店の良い所、問題点などを語り始めた。伊藤が、それにツッコミを入れる。山村の食へのこだわりに、真白は感心した。そこまで好きな物があるってスゴイ。俺には、そういうのあるかな…と思いを巡らそうとした時、頭にはあの人の姿が浮かんだ。え、いや、そういう意味じゃなく…と自分にいろいろ言い訳すればするほど、顔に熱が集まっていくのを感じた。どうにも収まらない顔の火照りを鎮めるため、真白はトイレで顔を洗おうと席を立つ。まだ仕事が始まったばかりの時間で、トイレには誰もいなかった。顔を洗って鏡を見ると幾分マシになった。何気に窓の外へ目をやると、そこにはどんよりとした重たい灰色の雲が空を覆っていた。
「ひゃー! 結構降ってた!」
「前島さん、傘は?」
「持ってない。ま、もう時間も時間だし、タクシーで帰る」
「便乗させてーん、前島~」
「それじゃ、俺は電車で帰りますんで、水上は?」
「俺も、駅に行きます」
前島弟、伊藤、山村、真白の四名で、飲み会だった。居酒屋に来たときは雨は降っていなかったのだが、どうやら飲んでる間に降り始めたようだ。真白と山村は駅に向かう。二人はちゃんと折りたたみ傘を持ってきていた。先輩二人は仲良く傘を持ってこなかったようでタクシーで帰っていった。
真白は、吊革を掴み電車の窓から雨を見てた。車内は座れない程度で、そんなに混んではいなかったが、少し蒸している。汗をかき始めハンカチをポケットから出しながら山村が、ふっと口を開く。
「そういえば、七夕って雨が降る事が多い気がするな…」
「…そういわれると…そうですね。去年は豪雨だったような気がします」
「リア充の織姫と彦星…ふふっ」
「なんか怖いんですけど、山村さん…」
「リア充は七夕でも爆発したらいいと思ってる」
「織姫と彦星は一年に一回しか会えないんだから、そこは大目に見てあげてくださいよ…」
家に着くと、真っ暗だった部屋に明りが灯る。人感センサーで自動的に明りが付く。冷暖房は部屋の鍵を持っている人間が家に近づくと感知して作動する。帰宅した時には快適な室温で迎えられる。真白は濡れてしまった制服を脱ぎ、ランドリーボックスへ放り込む。こうすると、明日の午後には部屋のボックスにクリーニングされた服が届く。下着類は洗濯機で自分で洗う。佐伯は洗濯機があるのにも関わらず、下着類もクリーニングに出していた事に真白は驚いた。そして真白が家にいる時は真白が佐伯の下着類を洗濯機で洗うようになった。
満月の月明かりの下で、佐伯と会い、いつのまにか自分は佐伯のものになった。初めは関係に戸惑い、不安で会社で佐伯を見かけるとつい目で追っていた。そんな真白の視線にすぐ佐伯は気が付いてくれて、いつもの微笑みで返してくれる。それに安堵し、嬉しい気持ちになる自分がいる。ドンドン佐伯が好きになっていく。こんなに好きになってしまって、どうしようかと、また不安が募る。それでも佐伯は笑顔で大丈夫だと安心を与えてくれる。
…ああ、佐伯に会いたい。
真白は広いベッドの上で、ぼんやりと佐伯を思う。こんな広いベッドの上で一人ぼっちなのは寂しい。一人暮らしをしてた時は寂しいなんて思わなかったのに、佐伯を知ってからというもの、真白は寂しく思う事がよくあった。会社で一度も会えない日、こうして佐伯が留守の日。いつでも電話していいと佐伯は言ってくれたが、向こうがどういう状況なのか分からないで電話するのは真白にとっては大きな壁だった。
でも…今日は…七夕だし。
本当なら会いたいが、佐伯はまだ地方の親戚宅だろう。でも電話ぐらいは許されるかもしれない…時間的には電話するには憚れる時間だが…真白は会いたい気持が溢れてしまった。そっと、ブレスレット型端末で佐伯の番号を呼び出す。それでもどうしようかと躊躇していたその時だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 255