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遅い夏休み①
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真白と佐伯は佐伯の運転する車で二泊三日の旅行へ出かける事になった。真白が他の社員の夏休みの予定に合わせてしまったため、寒くなりかけたこの時期に夏休みを取る事になってしまった。当然、佐伯も真白に休みを合わせる為に、この時期の夏休みとなった。
「俺、温泉に行くの初めてです」
佐伯の提案した場所に真白は嬉しそうに微笑んだ。その場所は有名な温泉地で昔から有名な場所だ。元々マモンの侵入がない温泉地として賑わっていた。マモンから守れている理由の一つに、ここは昔の武将の霊廟があり、もともと悪い物から守られている土地だった。真白達はそこへ寄って墓参りと、建物を見学しに寄った。そこで真白は写真と動画をたくさんとり、気付いた事をメモしていった。しかしその真白の様子に佐伯は苦笑いをする。せっかく二人だけの初めての旅行だというのに真白は仕事モード全開で、佐伯を見もしない。
「真白、あっちに馬がいるんだよ? 見に行かない?」
「え! 馬がいるんですか? 本物の?」
「本物の馬だよ」
そういうと真白が笑ってトコトコと、やっと佐伯の元へと戻る。佐伯はそっと真白の腰を抱くと真白は驚いて身を引こうとした。周りには多くの観光客がいて真白は恥ずかしがった。だが真白が逃げる事を佐伯は許さない。
「お前が仕事モードになってるのは、いいけどね…今は休暇で旅行中」
「え? でも、この建物…実際に見てみたかったんですよ…」
「でも、俺を無視してるのは頂けないね、真白」
「…無視してませんけど」
「俺がそう感じてるんだから、そうなんだよ」
「無視してないですよ…あ、馬! 本物だ!」
佐伯を無視してないと言いながら真白は子猫のようにクルクルと視線が動き回る。そんな真白を見て佐伯は苦笑いをした。
色鮮やかな美しい彫刻が彫ってある立派な馬小屋には、美しい白馬がいた。その白馬は真白達を見ると軽く尾をふり小さく鳴く。真白は本物の馬を見るのが初めてで、その美しさに目を奪われていた。馬小屋は中にも美しい彫刻が彫り巡らされ、この白馬に相応しい。
「この馬…とても綺麗です…」
「神馬だよ。大事にされてる」
「神様の馬ですか…確かに…そういう雰囲気ですね…」
武将の霊廟と神馬を見学し、二人は麓の温泉街で店を冷やかしながら楽しむと、車に戻り旅館へと向かった。その旅館は歴史が古く、ここもまた建物の柱や天井に美しい彫刻や絵が描いてあった。真白は調度品などに感嘆の息を吐いた。佐伯がチェックインの手続きをしている間、真白はずっと天井の美しい曼荼羅のような絵が描かれているロビーの天井を眺めていた。
「口が開きっぱなしだよ、真白」
真白の元に戻ってきた佐伯がクスクスと笑う。佐伯に指摘され、ぱっと真白は自分の口を両手で塞いだ。荷物を持ってくれている仲居もにこやかに笑っていた。真白は恥ずかしい顔を見られて、少し顔が赤くなり頬を両手で挟む。二人は仲居に促されて旅館の奥へと進んだ。真白たちの泊る部屋は離れにあり進むにつれて、山々が色付いて美しい自然の庭が見える。都会に住んでいるとこういう季節の変化に気が付かずに過ごしていた事を真白は改めて知った。
「紅葉が…すごく綺麗…」
「もっと寒くなると紅葉で真っ赤になって本当に美しいんですよ。紅葉が終われば雪が降って雪景色もとても綺麗ですよ」
「雪景色、綺麗でしょうね…見てみたいですね、佐伯さん」
「そうだね、きっと綺麗だろうね…」
真白と見る景色ならどの景色も、霞んでしまうけどね…そう心中で佐伯が言った。真白はそんな佐伯の声が聞こえたかのように、すっと目を反らした。目尻は少しだけ赤く染まっている。
部屋に着くと、その部屋はやはり美しい天井画と彫刻で、また真白の目を奪い、口が開きっぱなしになる。仲居は佐伯に簡単に部屋の説明と夕食を運んでくる時間を聞いて去って行った。真白が奥の扉を開くと、そこには露天風呂が見え、ほんのりと硫黄の匂いが鼻を掠めた。
「さ、佐伯さん…お風呂が温泉です! スゴイ…」
「ここはどこでもお風呂は温泉だよ、真白」
「部屋に露天風呂が付いてるんですね…」
「大浴場もあるけどね。離れには全室露天風呂が付いている」
しばらく縁側で仲居の淹れてくれたお茶を二人は飲みながら、美しい紅葉の庭を眺める。真白がそっと佐伯に寄りかかると、佐伯は真白の腰を抱いて、もっと引き寄せた。真白は顔を上げて佐伯を大きな瞳で見つめると、佐伯はその瞳に吸い込まれるように真白の唇にキスを落とした。二人は暫くお互いの唇の感触を半日ぶりに確かめた。
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