アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8月2日side窪田くん②
-
俺より背が低くてふっくらとした身体。
糸のように細いつり目と低い鼻に口の端がめくれた猫顔。
「……秋元さん」
会社の先輩だ。
「お、ロボ田くん」
秋元さんは小さな女の子の手を引いて近づいてきた。
そして女の子に挨拶を促した。
「こんにちは!」
「………こんにちは」
秋元さんと同じ顔の娘さんも、もちろん猫顔だ。
すごい。
子猫だ。
近づいてもアレルギー反応の出ない子猫がいる。
「ロボ田くん、ひとりかい?」
「これから待ち合わせです」
「いいなぁ。うちは家族サービスで。ほらあそこ」
秋元さんが指差す方を見ると、背の高い美人の女性と、その周りに猫人間の子供が5人いた。
「!!!!!」
「あ、ロボ田くん、もしかして驚いた?」
秋元さんは俺の表情を読み取れたことを喜んでいた。
しかし驚いて当然だと思う。
秋元さんはおめでた婚で、会社に入社したのと同時に第一子が生まれたそうだ。それから年子で毎年家族が増えているとは聞いていたが…。
「…そっくりですね」
子供が6人もいて、全員が秋元さんと同じ顔だ。
「いやぁ〜。嫁の親戚には大ヒンシュクなんだけどね、7人目こそ、嫁に似てるかもしれない」
秋元さんはにっこりしながら、お腹を手で覆うジェスチャーをした。
「…はあ」
7人目…奥さんは妊娠中ということか。
もう、猫人間以外生まれない気がするのだが。
俺も母親の血しか引い手ないんじゃないかというほど母親似だ。
もし兄弟がいたらやっぱり同じ顔なんだろうか。
そんなことを考えていると、秋元さんの子供たちがやってきて、いつの間には俺は猫人間に囲まれている状態になっていた。
「おにぃちゃん、元気ないの?」
「なんかしゃべって!」
「いっしょに来る?」
「にゃー」
大きいのから小さいのまで、一斉に喋り出した。
子供は苦手なのだが、猫顔というだけで全員可愛い。
「……」
「こらこら、お兄ちゃんはこれから約束があるんだって。邪魔しちゃいけないよ」
何も言わない俺の心境を読み違えて、秋元さんはゴメンねと謝った。
「じゃあまた明日、会社で」
「失礼します」
少しだけ名残惜しかったが、俺は会釈すると秋元一家に背を向けて歩きだした。
今日は良い1日かもしれない。
きつい日差しの中、額の汗を拭いながら、俺は地下鉄駅の改札を通った。
そして橘にメールしようと立ち止まった。
「……」
ネコの気配がある…ような気がした。
静かでしなやかな足音。
俺のネコセンサーが駅の構内で気配を感知するのはおかしい。
辺りを見回したが、ネコはどこにもいなかった。
しかし、小さな生き物が俺のズボンの裾を握った。
「……っ!」
見下ろして目が合ったのは紛れもなく猫人間、秋元さんの娘さんだ。
なぜ、ここに?
そう問いたいのに、声が出ない。
慌てて辺りを見回したが、秋元さんはいない。
「……」
「おにぃちゃんどこ行くの?」
「新宿。……だったが」
秋元さんのところに変更じゃないか!!!
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 127