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10月8日の突撃☆経営企画部
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なんだかんだと、窪田のいる経営企画部にちゃんと足を踏み入れるのは初めてだな。
そんなことを思いながら、俺は顔を覗かせた。
「失礼します」
経営企画部には窪田と秋元さんしかいないようだ。
2人は書類を挟んで何か話し合っている。
秋山さん、本当に猫顔だな。ふっくらとした肉付きに、吊り上がった糸目。口の端が笑っているみたいにめくれ上がっている。
経営企画はエリートでイケメンが揃っているはずなんたが、ロボットみたいに無表情な窪田と猫顔の秋山さんしかいないと、なんか噂と全然違う部署に見える。
「お疲れ様です」
俺が声をかけると、秋元さんが目尻を下げて笑い、お疲れ様ですと返してくれた。
窪田は黙って自分の机に戻り、A4封筒を取り出して俺に手渡してくれた。
「確認させてもらうな」
「……」
窪田は無言で頷いた。
中身は、春日さんから物流センター建設予定地に持ってきてくれと頼まれた書類だ。
窪田は書類を確認している時も今も、ジッと俺の顔を見つめている。
無表情だが、仕事で会えるのを少しは喜んでくれてるのだろうか?
「…うん、オッケー」
「よろしくお願いします」
俺と窪田は部署が違うこともあって、当然ながら同じチームにいても動きはバラバラだ。
こうやって顔をあわせると、窪田もちょっとは嬉しく思ってくれているのだろうか?
思わず窪田の頭を撫でようと手を上げると、窪田の右手がヒュッと風を切って、高速で払いのけた。
「いって!」
「バカかお前は」
「いや、…あれだ、髪の毛にゴミがだな」
「……」
窪田は無言で頭に両手を乗せて、シャカシャカと払った。俺が触れる余地がない。会社では本当に徹底してるよな、コイツ。
「ところで、ココってわりかし小綺麗っつうか殺風景だと思ってたんだけど…」
俺は壁側のスチール棚を指差した。
「なんでザリガニ飼ってんの?」
大きめな水槽にザリガニが3匹いる。エアポンプや水草や、けっこう本格的な設備だ。
「……夏川という社員がザリガニ愛好家なんだ。一番大きいのから、夏川1号、夏川2号、夏川3号と名付けてある」
「自分の名前つけてるのか?」
「夏川は自分大好きな男だからな。…昼休みか終業後なら、夏川…じゃなくてザリガニ釣りが出来るぞ。やるか?」
「う。まぁ、また今度な。なんか、お前んとこ楽しそうだな。心配してたんだが、窪田はうまくやれてるんだよな?」
「何も問題ない」
「そうか」
「そうだ」
「……」
「……」
ジッと、窪田を真似して見つめてみる。
窪田は無表情だが、無感情ではない。瞳の奥にはいろんなものが詰まっている。
最近は、人間関係もそれなりにこなしてる…のか?
窪田の瞳は心配になるどころか、何かに燃えているかのように力強い。
見守るっていうのは案外難しくて、何かあったらすぐに俺が助けてやりたいって気持ちはどうしてもおさえきれないんだけど、今の窪田はなんとなく闘志が宿っている気がする。
「…じゃ、今から会社出て春日さんとこ行くわ」
「よろしくお願いします」
「お任せください」
窪田が他人行儀にぺこりと頭を下げたので、俺も真似してみた。
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