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10月18日のどうした⁈
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名古屋土産は〝ひつまぶし巻き〟にした。
晩めしに食おうと窪田をメールで誘うと、窪田は食べると返事をした上に、品川駅まで迎えに来てくれた。
「くーぼーたー!」
改札を出た俺は、両手を広げてハグのポーズを取って窪田に駆け寄る。
窪田は…。
一気に眉間に力を入れ、舌打ちした。
どうやら、そこまでのサービスは取り扱っていないらしい。
しかも明日の出勤用にスーツ一式を持ってこいと言ったのに、窪田の所持品は小さなボディバックだけだ。
くそう、泊まらない気だな?
俺は窪田と時間を気にせずニャンニャン…いや、仲良く過ごしたいのに。
「窪田、やっぱお前んちに行かねぇ?」
「ダメだ」
「俺んちはあまり掃除できてないし。久々にお前の飼っていた白ネコの写真観せてくれよ」
「嫌だ」
「白ネコのマシュー、可愛いよな」
「可愛いな」
「よし、それなら決まりだ!窪田んちにしよう!!」
「⁉︎」
俺は窪田が昔飼っていた白ネコのマシューを褒め称えながら、巧みに窪田を懐柔した。
そんなにマシューの写真を見たいなら日帰りで来てもいいと、渋々だが窪田は俺を部屋に招いてくれた。
窪田がどうしてスーツを持って来なかったのか?
スーツ持参ということはお泊まりコースで、ニャンニャンする率が跳ね上がる。俺が誘わないわけがないからな。
だからこの時は窪田が照れくさがってるだけたと思っていた。
でもそんな可愛い理由なんてどこにもなかった。
俺たちは部屋に着くとひつまぶし巻きで晩酌して、俺は窪田から白ネコのマシューの写真を見せてもらいながらウダウダと居座った。
窪田が写真に夢中になっている隙に、俺は勝手にシャワーを借りてスーツケースの中の部屋着に着替えると、これでもう泊まりは確定だ。
帰る気なんて最初からさらさら無いしな。
明日は代休だから、窪田が出勤する時間に俺もここを出て自分の部屋に戻れば良いのだ。
「窪田ぁ〜」
俺たちはソファーに座っていたから、俺は窪田のひざの上にコロリとのしかかって甘えてみた。
「帰れ」
窪田はテレビ画面を観ながら、俺の髪を掴んで引き剥がそうとしている。
「イテェ!俺もう、酔っ払ったから泊まっちゃうもんね」
「それなら、俺はもう寝る。お前はソファーで寝ろ」
「ちょっ、寝るのは早くないか?」
「お前も出張帰りで疲れているだろう。寝ろ!」
窪田はリモコンでテレビを消すと、立ち上がって洗面所に向かおうとする。
俺はソファーの下に転げ落ちたが、慌てて起き上がって窪田を背中から抱きしめた。
「…っ、やめろっ」
「いいだろ、抱きしめるくらい。ここは会社じゃないんだし?」
そう言って俺は窪田の耳に吐息をかけた。
窪田の髪からシャンプーの香りがする。匂いも体温も、細いのに引き締まってる抱き心地も、全部が可愛い。
「こうすると、出張が終わって帰ってきたなって感じがする」
手のひらで窪田の腕を撫で、胸を撫で、優しく弄っていく。窪田の左胸は面白いくらいバクバクと鳴っていた。
「橘、今日はしない。明日は仕事がある」
「じゃあ、入れないで触り合うか」
「なっ、なんでそうなるんだ⁉︎」
窪田が顔を真っ赤にして俺を振り仰いだ。
「…んっ」
俺がそれを逃すわけもなく、そのまま窪田の唇をキスで塞いだ。
こういう隙のあるところがたまらない。
駆け引きに慣れてないのが初々しくて、でもこうしてキスしてみたら、もうキスは上手くなってて。
どうしようもなく俺の気持ちを掻き立てる。
「…っ、……ふっ」
「窪田…」
俺はキスを続けなから、窪田のシャツとスエットの隙間からゆっくりと手を差し入れた。
窪田のしっとりとした肌。薄く浮き出た腹筋の凹凸。
そのまま胸まで手を這わせようとした時だった。
「ウッ!」
窪田が唇を離して呻いた。
少し前かがみになって、片手で腹を庇うような姿勢を取る。
「窪田?」
「……しない」
窪田は俺の腕の中から逃れ、一歩離れてうつむいた。
「腹、どうかしたのか?」
「別に」
でも、痛がってたよな?
俺は軽く触れただけのつもりだったのに。
「見せてみろ」
「触るな」
「なんで隠すんだよ」
窪田がムキになるのでもみ合いになった。
明らかに不自然だろう。俺も強引に窪田を羽交い締めにしてシャツを掴む。
やっぱり痛むのか、窪田の抵抗はいつもよりぎこちない。
「いっ…」
「……!」
腕を払いのけながらシャツをめくり上げると、窪田の腹は内出血していて、かなり大きな痣が出来ていた。
「どうしたんだコレ⁉︎」
「…………」
「夏川さん…なのか?」
「違う」
「でもな…」
「違う。黙れ」
窪田は頑固だ。
でも、これはもう俺の我慢の限界を超えている。
この怪我はいくらなんでも酷すぎる。内臓を痛めていてもおかしくないだろう。
すでにじゅうぶん度が過ぎると思っていたが、更にその上をいくとは。
「マジで許さねぇ…」
怒りで漏れ出た俺の声に、窪田がハッと顔を上げた。
「橘、大丈夫だ。お前がそんな風に怒ることでは…」
「普通は怒るだろ!心配するだろ⁉︎」
「でも」
「でもじゃねぇんだよ!!!」
「…っ」
窪田は無表情だが、瞳が揺らいでいた。
俺たちが殴り合ったら空手有段者の窪田の方が勝つんだろうけど、今の窪田は明らかに俺の怒声に怯えていた。
俺が怒っているのは夏川に対してだ。
窪田にそんな顔をさせたいわけじゃないのに。
俺は深呼吸して窪田の両肩に手を乗せた。
「…頼むよ窪田。俺はお前にこれ以上何かあったらと思うと…」
「すまない」
窪田も俺の両肩に手を乗せた。
そして続けた。
「これは…俺が悪い。でも、こんな事が起こらないよう対処するし、大ごとにはしたくない」
「もう充分おおごとだって」
「頼む」
窪田が俺の首に腕を絡め、抱きついてきた。
「橘。夏川は歪んでいるが、それは俺を誤解しているからだと思う。一回だけ、夏川と話をしたい。一回だけだ。…それで、橘に頼みがある」
「……頼み?」
窪田はコクリと頷いた。
正直に言うと、俺は窪田を信用していない。
窪田の考えは甘すぎるんだ。だけど、本人の話し合いたいという意思はとても強くて、俺は渋々うなずいた。
だけど、更に何か事件が起こったら、俺も動く。
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