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閑話*バレンタインデー。伊吹の場合!
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朝、鞄の中と睨めっこする俺。
鞄の中には、教科書とノートを押しのけて我が物顔で居座るチョコレートの箱。
そう、今日はバレンタインデー。
俺は男だけど、付き合っている奴がいるわけで。
雰囲気的に俺が女役みたいな感じで。
まぁ、結構そいつの事が好きなわけで。
恋人っぽいこともしたくなるわけで。
作ることは出来なかったけど、こっそり買ったこれ。
雀に渡す事ができるだろうか。
......この状況で。
「雀せんぱーい!」
「月島ー!」
「レボリューション!!」
「月島せんぱーい!!」
男子校、なのに。雀はモテる。
綺麗な顔をしてるし、優しいし。
だけど俺の彼氏って事は他の人も知ってるわけで!!
なのにこのモテ具合。
雀に近寄ることさえ出来なかった。
「す、すずめ!」
試しに呼んでみるけど、目すら合わない。
「もう、いい」
大人しく教室に行こう。そしてこんなチョコレートなんて家に帰って1人で食べてしまえ。
トボトボと歩き出す。
しかし、その手は誰かに掴まれた。
「伊吹!」
「す、ずめ?」
さっきまで呼んでも気付かなかったのに。
ブレザーなんかは引っ張られてヨレヨレだけど、そこには確かに雀がいて俺を見つけた。
「おはよう。行こう?」
さっきまでの喧騒が嘘のように周りは静かで。
みんなが雀の邪魔をしては行けないと思っているみたいだった。
だって、俺の事を睨んでるやつはいるけど口は出してこない。
「はやく」
ごく自然に手を取られて、校舎に向かう。
雀はあんなに囲まれていたのに、一つもチョコレートを持っていなかった。
それが、嬉しかった。
空き教室まで連れて行かれて、ふぅと、雀が溜息をついた。
「ごめんね、こんな所まで。伊吹とゆっくり話をしたいから」
ぎゅっと俺を抱きしめて雀が言う。
渡すなら、今しかない。意を決して俺は鞄からチョコレートを出した。
「雀、こ、これ!」
「え...チョコ?俺に?」
真っ直ぐ顔を見れなくて、そっぽを向きながら頷く。
「...伊吹はこういうの興味ないと思ってた」
反応がイマイチだ、そう思って雀を見た瞬間だった。
「ありがとう」
ふんわりと、普段無表情な雀が華が咲いたかのように笑った。
それだけで俺の心はキュンキュンと痛いぐらい締め付けられて、あぁ、胸が痛くなるのは傷付いた時だけでは無いんだって思って。
嬉しくて嬉しくて堪らなかった。
その後、雀からチョコレートより甘いキスを貰ったのは別のお話。
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