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変えられなかった想い 3
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その後、一人で部室を出て震える手で電話をかけた。電話の相手は、梅村君。
TRururururu……
鳴り続く電話の音。いつまでも君の声が聞こえる気配がない。それでも、着信拒否をされていないことにほっと胸を撫でおろしてしまう。なんとも、情けない。
コールが1回2回……10回以上鳴っても君は出てくれなかった。何か用でもあるのだろうか。それとも、俺を避けているのだろうか。
学校から出て、気づけばとある場所に来ていた。
自分の家じゃない家。
けれども、何度も行き慣れたそこ。
君の部屋がどこにあるのかも知っている。
そして、その部屋から今、明かりがついているのも見える。
君は部屋の中にいる。
しかも、寝ているわけではない。
それからして、きっと、電話に出ないのは―――
俺を、避けてるせい……
鼻の奥がつんとした。それでも、立ち向かわないといけない。俺と君との間は完結していない。たとえ君が俺に愛想を尽くしていようとも、俺は君を忘れられなかった。
チクチクと刺さってくる痛みが心臓からする。
一歩、また一歩と君の部屋の玄関へ進む足。
今、君は何をしている?
俺のことは、もう忘れているのかな?
チャイムのボタンを押そうとした時だった。扉の向こうから誰かのうめき声が聞こえた。
いや、誰かではない。これは、君の声。
君の、生々しい声そのもの。
相手は、誰?
例の、人?
扉の前でハッとなる。
俺は一体何をしているのだろうかと。きっとこれは、梅村君が誰かと……やっている声だ。君が選んだその人とやっている。俺は? 俺は君に選ばれなかった人間だ。それなのに、未練がましくうじうじとここにやってきている。
さっきまであった沸き立つ感情は、すっかり萎んでしまった。
もうダメだ。
ダメなんだ。
そう自分に言い聞かせて、踵を翻した。
”嫌だ! 離して! セ――が、――ツがいい!”
「え……」
諦めたその時、梅村君が俺の名前を呼んだ気がした。俺は急いで扉に向かって走り、チャイムを押した。だが、扉が開く様子はない。
もし……さっき聞こえたのが俺の幻聴じゃなければ……今……梅村君は襲われている?
「梅村君、聞こえる?!」
焦って俺は冷たい扉を叩く。
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