アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
12ページ目 8 弟side
-
「なんで女装?」
呼吸を整えた兄貴に聞かれた。最初はメイド喫茶をやる予定だったのだが、他のクラスと重なってしまい、代表者同士のじゃんけんの末うちのクラスは敗退。その結果を不服とした一部の奴らのわがままと新しく決定した物とを合わせてそのような結果になったのだった。
「男子ってやたら女装したがるよな!俺が高校の時もそうだった。こういう時じゃないとする機会がないからかな?」
「さてね。別に俺はしたいと思わないから分からない。」
「一人でやるのは恥ずかしいけれどみんながやるならやってみたい、ってやつかな。」
特に運動部の奴らのミニスカは強烈だよな、と言って兄貴が笑った。
一人暮らしはそんなに快適なのだろうか。何はともあれこっちに戻ってくる時はしぶしぶ、という体で実家なのにどうも肩身が狭い、といった雰囲気を感じさせる兄貴が楽しそうだから、よかった。
「服飾係だっけ。じゃあメイド服作るの?」
「スカートだけね。俺授業以外で裁縫なんかしたことないし、布の裁断とかあくまで補助的なことしかしてないよ。」
兄貴はよく食うから肉の分焼き豆腐、しらたき、野菜で嵩増ししたのだがもう鍋の中にはほとんど具が残っていなかった。
鍋に箸を伸ばす兄貴を制して雑炊の支度に取りかかる。
当事者の俺よりも兄貴の方がよっぽど楽しそう。
「文化祭、来る?」
「…お前、女装しないんだろ?俺はいいよ。」
苦笑いしながらやんわり断られた。
「俺が女装すれば来てくれる?」
食い下がるなんて、柄じゃない。俺がそう言うことを予想していなかったのか、兄貴がポカンとした表情を浮かべた。
「冗談だって。それが嫌だから係就いたんだし。」
今日一日でいくつ嘘を吐いたのだろう。兄貴のことだからどうせ面倒臭いと言われるに決まっている。クラスメイトを彼女と嘘吐いた時もそう。返答は分かっているのに兄貴の口から聞くのは、怖い。
「準備の進捗度はどう?」
誤魔化すように兄貴が口を開いた。
「とりあえず一着試作品が完成した、ってところかな。」
火力を強め、蓋をした鍋からぐらぐら音がする。鍋つかみをして蓋を外すと凄まじい白煙が立ち上る。
「…それで間に合うのか?」
文化祭なんて、どうでもいい。
「さてね。なんとかなるんじゃない?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
153 / 228