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「兄貴。」
弟の冷たい手のおかげで眠気が覚めたつもりでいたがいつの間にか寝ていたらしい。風呂が沸いた、と言われたがそれを告げる電子音を聞いた記憶がない。
「着替え、風呂場に持って行ってあるから。」
渋々身体を起こしてから大きく欠伸をした。俺が動くまで何度もしつこく言われるに決まっている。名残惜しいがぬくもりに別れを告げて立ち上がる。
「…なんでお前も付いてくるの?」
俺が立ち上がると同時に弟も立ち上がり、ぴったり俺の後を付いてきた。
「俺も入る。」
「…あっそ。」
「あーやっぱ風呂はいいな。幸せ。」
俺に洗面台を譲ってくれた弟が少し遅れて入ってきた。半分場所を開けてやり、洗い場を向いて並んで湯船に浸かった。
「あんた昔風呂面倒臭いって言ってたじゃん。」
「いつもシャワーだと風呂が恋しくなるんだよ。」
確かに一人暮らしをする前は好きではなかったが、いつもシャワーだけだから風呂に浸かる、という行為を贅沢に感じた。
「なぁ、今度温泉行こうよ。」
「嫌だ。そんなに風呂がいいなら毎日帰ってくればいいじゃん。」
一人なら足を伸ばせる広さはある浴槽だが、男二人ではかなり狭い。俺は胡坐を掻き、背を丸めて縁に両腕を乗せてそこに頭を預けていたが弟は膝を抱えて身体を小さくしていた。
「時間と交通費考えたら銭湯行く方が安いって。」
「…………。」
弟が眉間に皺を寄せて押し黙った。
「何、そんなに俺に帰ってきてほしいの。」
「…別に。」
急に不機嫌になった弟の横顔を見つめる。素直じゃない弟が可愛くて思わず頬が緩みそうだ。
「分かったよ。文化祭、行くよ。」
弟が勢いよく俺を振り返った。
「たまには帰ってくるようにするから。な?」
ふっと弟の表情が緩んだ。
「…ん。」
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