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「…手、かな。」
「手?」
弟に呆れたようなため息を吐かれた。
「うん。今でこそあんま大きさ変わらないけど昔のあんたの手はすごく大きくて、いつも温かくて大好きだった。」
弟の手が俺の左手にぴったり重なった。弟の言う通り大きさはあまり変わらない。若干弟の方が大きいようだ。
「今でもあんたの手がすごく大きく感じるよ。温かくて、優しくて、大好き。」
弟が指を絡ませ、優しく握ってきた。
「あんたは?」
「は?」
「まさか俺にだけ言わせて自分は言わない、なんてことないよな?」
弟の指先に力がこもった。
「俺のどこが好き?」
真っ黒な瞳が俺の目を覗きこむ。
「言っとくけど、メシがうまいとか片付けしてくれるとかはナシだからな。」
俺が口を開く前に封じられてしまった。
「か、…顔かな。」
苦し紛れだったがこの答えで正解だったらしい。
「優子さんもあんたも、本当俺の顔好きだよね。」
手を解いたり握ったり。仏頂面で言いながらも嬉しそうだった。
「あれ、寝ないの?」
ベッドを抜け出した弟の背中に問う。
「その前に勉強。テスト近いからね。」
文化祭はテストの翌々日らしい。
「浮かれてる暇があったら勉強するべきでしょ。来年は受験生なんだしさ。…そう思わない?」
「まぁ、そう言うなって。」
文句を言いながら部屋を出ていった弟がいつも学校に持って行っているバッグを片手に戻ってきた。
「俺先に寝てもいい?」
隣で勉強道具を広げる弟に訊ねる。
「ん。」
「あんま遅くまでやるなよ?寝る時電気消して。」
「んー。お休み。」
生返事をする弟の視線はすでに問題集に落とされていた。弟に背を向け、目を閉じた。
遅くまで勉強していたのだろうか。シャープペンがノートを走る音が絶えず聞こえていた。
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