アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
12ページ目 22
-
「兄貴、ちょっといい?」
それは俺が高3で弟が中学に上がりたてだった頃の話…らしい。
10歳ぐらいまで「兄ちゃん兄ちゃん」と俺べったりだった弟は年齢的なものか、周りの環境のおかげか、だんだん兄離れが始まって中学に上がった時には「兄ちゃん」と呼ぶことをしなくなった。
「んー、何。」
その頃の俺は受験生で、おふくろから急に進路変更を要求されたり、好成績を修めることが当然といった無言のプレッシャーがあったり、、周りは明確な夢を持って進路選択をしていたのに自分には夢がないからと焦ってみたりと常にピリピリしていた。自由時間のほとんどを机に向かい、一人で部屋に引き籠って寝る間を惜しんで勉強に励んでいた。
背の低かった弟はこの頃から一気に身長が伸び始め、ぶかぶかだった制服をピッタリ着こなせるようになっていた。ちなみに、最初に買った制服は丈が合わなくなったから卒業式を迎える頃には俺の学ランを着ていた。
「兄貴さ、告白されたこと、ある?」
勉強で忙しい俺にそんな浮かれた話で時間を取らせるなと、この時の俺は相当頭に来たに違いない。
「何、告白されたの。よかったじゃん。」
「そうじゃなくて!…返事、待ってもらったんだけど俺その子のことよく知らなくて。」
適当にあしらおうとしたのに弟は食い下がってきた。おふくろは根掘り葉掘り突っ込んで聞いてきそうだし、友達に相談すれば冷やかされるに決まっている。だから兄である俺に相談を持ちかけたのだろう。
「俺、どうしたらいいのかな。」
「付き合いたいなら付き合えばいいし、興味ないなら断ればいいだろ。」
「それが分からないから相談してるのに…。」
「じゃあオーケーしてみれば?これから好きになるかもしれないだろ。」
自分のことで精一杯の俺は弟に気を回してやることをせず、そう答えたらしい。弟から聞いたところで思い出せなかったけれど。
俺も弟も、一応スリッパは履いていたが裸足だった。話しているうちに冷え込んできて下着を洗濯機に放り込んでからこたつのある部屋へ移動した。
こたつを入れ、何故か並んで座る。みかんの皮を剥きながら自分からあまり語らない弟の昔話を聞いた。
「告白されたらとりあえず付き合ってたから何人と付き合ったかは覚えてない。」
「…へー。」
弟は変なところが真面目だから恋愛経験が皆無に等しい俺の助言をそのまま鵜呑みにして実行してきたのだろう。そこに好意がないのだから冷めていると言えばそれまでだが、そんなところが可愛いと思う俺はきっと兄馬鹿なのだろう。
「映画行ったり、遊園地行ってみたり、デートはした。キスもセックスもした。」
「…うん。」
それにしても、惚気話と取れるそれを自慢気に言うのでなく淡々と語る弟を「らしい」と思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
167 / 228