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17ページ目 1 弟side
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「おめでと、兄貴。」
「は?」
慌しい朝の時間。まだ日が昇りきる前なのにすでに蒸し暑い。外からは蝉の鳴き声が聞こえてきて耳障り。テレビには週間の天気予報が地域ごとに表示されていて、それによると全国的にしばらくは晴れの日が続く模様。
「今日は何の日?」
歯ブラシを咥えてポカンとしている兄貴の、中途半端に着られているワイシャツの釦を留めてゆく。そこまで言ってようやく思い出したらしい。
「…ああ。ありがとな、けーた。」
7月27日。兄貴の25回目の誕生日。
「誕生日なんてお前が祝ってくれるだけで他はいつもと変わらないよ。」
「だったら毎年俺が祝う。」
「そ?ありがと。」
どうしてそういう話になったのかは覚えていないけれどいつかの兄貴の誕生日に、兄貴が苦笑いしながらそう言ったことだけは覚えている。兄貴に言わせれば、誕生日なんて20歳を過ぎれば特別でも何でもないらしい。
「じゃ、いってくる!」
「ん。いってらっしゃい。」
スーツ姿の兄貴が俺を残してドアの向こうに消えていった。兄貴は仕事、俺は学校。何の変哲もない、ただの平日。
「けーた、遅くなってごめん。今から帰る。」
「ん。お疲れ様。気をつけて。」
月末月初は仕事が忙しいらしい。普段19時頃帰宅する兄貴から電話が掛かってきたのは20時過ぎだった。
「ただいまー。あっちー。」
「おかえり。」
21時、疲れきった兄貴を黒猫と共に出迎える。
今日は来客があったらしい。見るからに暑苦しい上着と鞄を受け取って、俺を先頭に部屋に戻ってきた。上着をハンガーに掛けている横で兄貴がネクタイを緩めている。
「ねえ、今日は先に風呂入ろ。」
「けーた、手、こうして。」
俺の言ったことには答えずに両手を前に出し、手首同士をくっつける動作をした。言われるままに兄貴の真似をすると、そこにネクタイが括られていく。
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