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美術室
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美術の時間は嫌いじゃない。
絵具を握って何かを描いているときは嫌な現実から逃げられるから。新しい色を塗り合わせているとわざとらしくキャンパスを蹴られるが、そのときだけは無視できた。
自分の世界を作り上げることが得意になってしまった僕は黙々と筆を滑らせる。
書くものは決まっていない。なにもない状況からパーツを生み出し組み合わせる作業は好きだ。無から有を空想して頭の中で完成させ、それを反映させる。
でも最近頭の中が空っぽになってくれないんだ。
先生の手を取ってからずっと先生のことを考えてる。
先生以外のことが考えられないんだ。
たまに見せるちょっと照れたような表情、困った顔、嬉しそうな声、優しい仕草。息をする過程から吐き出す終わりまでの動作だけで心臓が動く。
貴方にしか跳ねない心拍数。貴方しか思わないこの心。
こんなちょっぴり離れているだけで苦しい。
恋って楽しいね悲しいね辛いね嬉しいね。
喜怒哀楽が全部詰め込まれた恋の形に僕は塗りあげられるだろうか。
独りよがりになっていないことを願っている。
先生も僕が好きで僕も先生が好き。
憧れの関係。なのになんでこんなにも苦しいんだろう?
僕の心は、空色に染まっていた。
無意識のうちにいつの間にか絵が完成していた。出来上がった絵に思わず苦笑する。
自分であきれるぐらい真っ青な色遣いだ。
「あら?誰かに似てるわねそれ」
美術担当の先生が絵を覗き込んで一言感想。
ドキドキしながら愛想笑いでごまかす。
陽だまり色と空色の中、優しい相貌を浮かべる先生によく似た男の人がいた。
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