アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
風邪
-
ーーピピ、ピピ、ピピ
脇に挟んでいた体温計の計測終了の音を聞いて、怠い腕を動かしソレを取り出して確認すると38.4という数字が並んでいた。
僕が持っていた体温計を遥海は奪いその数字を見て顔を顰める。
「38.4度か...」
全身が怠くて、鉛のように重たく感じて指一本を動かす事さえも億劫になる。
頭は熱くて痛いのに、身体は寒くてカタカタ震えが止まらない。
「寒い...」
「ちょっと待ってろ」
自分の声とは思えないほど掠れた変な声が出て、喉もやられているなと思った。
遥海は僕のまくれた布団を首のギリギリまで引き上げ髪をさらりと一撫でしてから、部屋を出て行った。
時間帯は早朝5時の平日。八時半から普通に学校はあるが、僕は絶対いけないだろうな。
あまりの寒さに体を丸め手を握り合わせ、目を開けているのさえ辛く感じて閉じるけど眠ることは出来ない。
辛すぎて眠れない...。
普段風邪を引くこともない僕は熱を出した記憶もほとんどない。あるとしても微熱程度の軽いものだけで、インフルエンザがどんなに流行してもかかった試しがない。
「う...」
「ちょっと冷たいぞ」
いつの間にか戻ってきていた遥海が傍らに膝をついて僕の前髪をかき上げ、現れた額に冷たいものが張られて眉間にしわを寄せた。
多分熱冷ましシートだとは思うけど、その冷たさとムニュッとした感触が嫌で、剥がそうとした手は、呆気なく遥海に掴まれて布団の中にしまわれた。
「や...」
「取るなよ。代わりにコレかけてやるから」
遥海は持ってきた毛布を布団の上に重ねてかけた。少し重みが増しただけで、暖かくはならない。
「泪、少し起き上がれるか?水分取らないと...脱水になったら困るから」
「むり...いらない」
喉なんか乾いてないのに、怠い身体を動かしたくない。
「じゃあ、我慢して飲めよ?」
ごそごそ動いた遥海が変なことを言っているが相手にするのも辛くて、そのまま放っておく。
すると、横を向いていた僕を仰向けに転がし閉じていた唇を指でなぞられ隙間を作らされた。急に何をするんだとムッとした僕に畳みかけるように冷たい唇が触れ、液体が少し流し込まれた。
「んー!」
お茶らしきものをごくんと飲み込むと唇は離れていったけど、またすぐにやってきて僕は抗議の声をあげた。
もう一度飲み込んでから、重たい瞼を持ち上げ半目で睨むが遥海はもう一度コップに口をつけていた。
「やだってば...」
布団の中に口を隠したが、結局コップのお茶がなくなるまでこの行為は続けられた。
「ひどい...最悪」
悪態をついているけど、風邪が移ることより僕の看病を優先させてくれて、嬉しかったりしなかったり。
「次は食い物だな」
「いらない」
「だめだ。作ってくるから、少しだけでも食えよ」
いつになく優しい声色と微笑みを置いて、遥海は再び部屋を出て行った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
60 / 123