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「もう、この話はいいでしょっ!終わり!」
「ダーメ。肝心なこと聞いてないから」
無理やり終わらせて、帰ろうと立ち上がった僕の腕を勇くんは素早く捕まえてクイッと引いた。
「肝心なこと?」
「そう。1個だけ、いい?」
”お願い”といつもとは違うアングルからの上目遣い。
そして、勇くんに対する不信感よりも勝るお強請りに僕は再びベンチに座っていた。
「…いいよ」
半分渋々頷くと、勇くんはゆっくり微笑む。
けれどか弱い子犬のような雰囲気は一変していた。
「ありがと。実は気になってたんだけど、」
その時見せた勇くんの顔は全くの別人のようだった。
細められた瞳、ゆっくり持ち上がった口角。
背筋を悪寒がかけ登った。
爽やかでかっこよくて王子様のようなキラキラした彼はどこにもいない。
ここにいるのは、妖艶な悪魔。
「泪はずっと俺のことが好きだっただろ?」
「──ッ!!」
悪魔が紡いだ言葉は僕の頭を強く殴り、その瞬間頭が真っ白になった。
心臓を鷲掴まれたかのように全身が強張り目を大きく見開く。
僕の呼吸が止まる。
そんな僕に満足したのか、勇くんはより恐ろしい笑みを深め掴んでいた腕からスルスルと手に触れてキュッと握りしめた。
「俺と柚瑠が付き合い始めてすぐ遥海先輩と付き合っただろ?だから、何でかなぁって。もしかして、腹癒せに遥海先輩と付き合ったのかなぁって思って」
何…ソレ…。
「俺さ、後悔してるんだよ」
言葉を無くし、もう僕はただただ首を降るだけだった。
でも彼はその口を閉じようとはしない。
「柚瑠じゃなくて泪と付き合っておけばよかったって」
やめて…お願いだから黙ってよ。
「だから、泪。俺と付き合おうよ」
それ以上変な事言わないで。
「俺は遥海先輩より泪のことたくさん知ってるから、絶対泪のこと満足させてあげられる」
現実を受け止めきれず放心する僕は蚊帳の外。
「試してみなよ。俺と遥海先輩のどっちがいいか、比べればいいじゃん」
掴まれていた手が徐に、指と指を絡ませられる。
初めて感じた手の感触は硬く無機質だった。
「二股していいから、な?遥海先輩には言わないし、絶対秘密にするから」
彼の手が僕の頬に伸びて、そっと包み込む。
「泪……」
まるで逃がさないとでも言うような冷たい手。
囁かれる声は彼の声ではないかのように色っぽく、僕の耳を刺激する。
「好きだよ」
どこまでも真っ黒な細められた瞳。
近づいてくる厚い唇。
触れたらきっと心地いいだろう。
ずっと想像していた彼の唇は──
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