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接吻と歪み。 side陽太
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街灯できらきら光る通りをあるく。
[唇にはキスさせてくれないのね]
さっき女の言葉が蘇ってきて、ふと自分の唇に指をおく。
確かに俺は、弌以外に唇にキスをさせない。
それは俺なりの誓いで。
俺が弌以外のヤツとセックスをするのは他でもない、弌を愛してるから。
弌が、浮気して帰ってきた俺を見て、死にそうな顔をするのが堪らなく可愛い。
そうしてその絶望しきった顔に沢山口づけてやると弌の瞳が潤んで、涙がぽろぽろ零しながら。
嬉しそうに、愛しそうに、微笑む。
…その顔が愛おしくて仕方ない。
俺はちゃんと、弌に愛されてるって。
弌は俺を捨てないって。
そう、思えるから。
だから、どうしても唇だけはほかのヤツなんかで汚したくなかった。
帰ってきて一番に弌に触れる部分だから。
汚いまんまじゃ、触れられないから。
歩きながら、あぁ自分はなんてクソヤロウなんだって思った。
今さらだけど。
最近、度を超して弌の精神状態が酷いのも、体調が悪そうなのも知っている。
多分、確実に自分の、せい。
それでもこの意味のない、弌を傷つけるだけの行為がやめられない。
愛されてる自信がないわけではないけど、不安だった。
確たる証拠がほしかった。
…最初は、それだけだったのに。
いつの間にか、夜遅くに帰って心配させるだけだったのが相手を作ってデートをしたりセックスをしたりする事に変わっていて。
いつの間にか、愛されてる事を分かりたかっただけなのにどんどん弌が自分から離れられなくなるのを見ることに幸せを見いだしていて。
考えると、ゾッとした。
歪んだ自分の弌への愛に。
自分の弌への執着に。
離せないと思った。
離したくないと思った。
自分の間違いを正当化したくて、心の歪みに気づきたくなくて、
なにより弌に、あいたくて。
気づけば俺は全速力で夜の家路を走っていた。
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