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「母さん」
「…あっくん?来てくれたの?」
「おう…土産持ってきた。母さん好きだろ、桃」
俺はベッドの横の椅子に座ってテーブルに荷物を置いた。
「あっくん皮むけるの?お母さんやろうか?」
「手が切れたらどうすんだよ…痛いだろ」
「うふふ…昔から口下手ね。心配してくれたのね。ありがとう」
母さんは口を手に当てて微笑む。
「う、うる…さいな…悪いかよ、心配して…」
「いいえ、嬉しいわ」
俺は桃の皮を剥き始めた。
「…?あっくん、どうしたの?その耳たぶ…とても痛そうだけど…」
「あぁ…ちょっと…自分で髪切ってたら耳も切った…」
俺は剥き終わった桃を皿に入れ
母さんに渡した。
「ありがとう。とても綺麗にむけるようになったのね。中学生の頃なんて、とっても歪だったものね」
「…いつ退院するんだよ」
「わからない。でも、すぐではないみたいね」
母さんは笑顔でそう言う。
「…そっか。じゃあ、俺帰る」
「また来てくれる?」
「おう」
「…親に嘘は通じないわよ、あっくん」
「……」
病室を出た俺は、思わず笑みがこぼれた。
「…やっぱ母さんに嘘はつけねぇな」
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