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#28 有限なもの
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『ワァアアアアアアア…!!!』
目の前のお客さんたちが、大きな歓声を上げている。
みんな汗をかきながら、手を挙げて大きく振っていた。
…………すげぇ。
…これが、文化祭……!
そう思うと、緊張なんて消えていった気がした。
ただ、この一時を楽しもうと思えた。
俺たちはその場にしゃがみ、曲の前奏の前の態勢になった。
~♪~~♪~~♪~♪~!!
スピーカーから大音量で曲が流れた始めた。
「…みんな、叫べぇええええッ!!!」
『キャアアアアアアアア!!ワァアアアアアア…!!』
優の大きな掛け声と共に、最高の歓声が沸いた。
「今日はお疲れ様でしたー!また明日も頑張りましょー!」
あっという間に、文化祭1日目が終わってしまった。
実行委員がこう言うと、クラスメイトのほとんどがもう帰ってしまっていた。
そんな中、俺は優と一緒に体育館のギャラリーに上がっていた。
今日1日で多くの人が来て多くのクラスや部活が体育館を使用したため、生徒会の生徒が掃除をしていた。
俺らはその様子をバレないように見下ろしていた。
「………もう文化祭が終わったな…。」
「まだ1日目だけだろ。そんなショボくれるなよ。」
「…でも、あっという間だったなって思ってさ。…こんなに楽しいのに、1年に2日間しかなくて、それが学校生活の3回分しかないんだぜ?……俺にすれば、少ないって思う…。」
「…………確かに。…結構回れる時間があるって思ったけど、今日になればそんなの嘘っぱちだよな。……結局、午前中はたこ焼き食べただけだし、午後はずっとここで体育館使ってたクラブとかクラスの発表見てただけだったな…。…………でも、すげー楽しかった。」
開いている窓から涼しい風が入り込み、カーテンを揺らした。
「………………何で、楽しい時間は早く過ぎるんだろうな…。」
……楽しい時間がたくさんあったほうが、誰だっていつも幸せに過ごせるのに…。
「…………相対性理論ってやつだよな。…アインシュタインの。」
「うん。前にテレビでやってるの見た。……本当に、時間が早くなったり遅くなったりするんだって。」
「聞いたことある気がする。未来、本当にタイムマシンが発明されるかもしれないってやつだろ?……そうなったらいいなぁ。」
「…………もしタイムマシンがあったら、優はどこの時代に行く?」
優は少し考えたように答える間が空いていたが、答えは1つしかない、とでも言うような顔で答えた。
「…………そりゃ、過去だろ。…武博と一緒にいて、時間が短く感じたその瞬間に、…かな?」
胸の中に、ポッと暖かい火が灯ったようだった。
「そうなったらいいな。…楽しくてもっと一緒にいたいって思ったら、タイムマシンに乗ってまたその瞬間に戻ってもっかい最初っからにして、また武博とイチャイチャすんの。」
「……ん……////」
聞いていて恥ずかしい。
でも、そう答えてくれたことがとてつもなく嬉しい。
優の言った答えが、俺と考えていることと全く同じだったから。
「…でもなんかそれ、タイムマシンと違くね?(笑)」
「そうか?じゃあ、俺は時間が戻せる道具が欲しい!それか、時間が止められるやつ!」
「ははは…!優、時間に欲張りすぎ!」
「そんなことない!誰だって思うはずだろ?」
優がそっと俺に微笑み、俺の肩を抱いて引き寄せてきた。
「……それくらい、時間ってのは大事にしなきゃいけないってことだよ。」
…シャッ
優の引っ張ったカーテンは、俺たちを隠した。
そのまま、俺たちは何度も口づけを交わした。
時間は無限じゃない、有限なんだ。
だから、誰もが一瞬の時を無駄にしたら、後で後悔するんだ。
あのときああすればよかった、っていうのはみんなが思いたくないことのはずなのに、誰もがそう思うことが何度もある。
その後悔の苦しみを、みんな知っている。
……後悔なんて、したくない。
なら、自分の本能のままに動けばいいんだ。
今の瞬間を、精一杯楽しめばいいんだ。
やりたいことを好きなだけ。したいことを満足するまで。
……俺たちはそう信じ、何度も何度もキスを繰り返した。
自分の思いを伝え続けた。
「…………優…?」
「……ん?」
「………………好きだよ……。」
「…………………………俺もだよ、ばーか。」
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