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#34
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『ガシュ、ズドドドド…!』
『バン、バン、バン、ドォオオオン!』
「あ、やべ!俺死ぬ!マジ死ぬって!」
「いけ、いけ!…優、覚悟ぉ!」
「うおぁあああ!…くっそ~…。また負けた…。」
「あっはは!優あんた弱いのね。さっきからずっと負けてるじゃない。」
「武博と姉貴が強ぇんだよ!…何でマル連打してるのにシカクと同時押しできんだよ!どういう指してんの?」
「いやいや、ふつーに出来るだろ。」
「…優、バトルゲームのセンスないのね…。」
「ちっくしょおお!…武博!もう1回だ!次は負けねぇ!」
俺が香織さんに優のことを教えてと言ってから、すぐに優が部屋に戻ってきた。
まるで、優が俺たちの会話を聞いていて、言われたくないことを言いそうになったからそれを止めるために入ってきた、とでも言えるようなタイミングだった。
俺は香織さんに、優のいないうちに話せなさそうだから、SNSのチャットアプリで話そうと言われ、IDを交換してもらった。
優はこのことを見ていたが、何も言ってこなかった。
それが何だか、優に突き放された気がして、怖くなった。
でも、優はメリハリがちゃんとしているのだろう。
部屋に入ってきたときは、とても悲しそうで不安そうな表情をしていた。
俺たちの話を途中から聞いていたのかもしれない。
それでも、自分からゲームやろう、と言って俺たちが変な空気にならないようにしてくれた。
…また、新しく優の良いところを見つけたのに…。
ピカッ。……ゴロゴロゴロ…
窓の外の空が、一瞬白く光った。そして、その数秒後にゴロゴロという音が響いた。それと同時くらいに、家の屋根を強く叩きつけるような雨が降ってきた。
「…ん?…雷か?」
「みたいだな。…今日雨降るのか。」
「明日は結構荒れるみたいだし。…武博、帰り大丈夫か?」
「俺、チャリで来たわ(笑)」
「この天気に!?天気予報見なかったのか!?」
「あ、はは…。……午前中ずっと寝てたからな。」
「武博らしくないな。…帰りどうする?早めに帰るか?」
「そうしたほうがいいかもね。今日はもうずっと天気悪いみたいだし、あんまり荒れてないうちに早めに帰った方がいいわ。」
香織さんにもそう言われ、俺は天気がこれ以上悪くならないうちに帰ることにした。
「武博君、また遊びにおいでね~。」
「はい、是非。…お邪魔しました。」
「……また、ね…。」
香織さんが言った、『またね』が、俺にはそれがとても重く感じた。
……また、後で…。
香織さんから教えてもらうから。
玄関の扉を開けると、俺が思っていた以上に大粒の雨が強く地面に打ち付けられていた。
この様子だと、傘なしで帰るのは辛いだろう。
道路の隅に停めた自転車もびしょ濡れに違いない。
「うっわぁ…。ヤバイな、この降り。…………傘貸すよ。こんな雨の中じゃ、チャリなんて乗ってられないだろ。」
「いいのか?助かるよ。」
「いいってことよ。」
俺は優から少し大きめの傘を借りて、外へ出た。
そして、また明日な、と言って、俺は優の家の脇に停めた自転車の元へ駆け寄った。
思った通り、自転車はびしょ濡れで、鉄の部分が錆びてしまいそうだった。
俺が自転車の鍵を挿し、家へ向かって歩こうとしたとき、背後からばしゃばしゃと誰かが走ってくる音が聞こえた。
「…武博……!!!」
優が、傘もささずに今にも泣き出しそうな顔をしながら走ってきた。
「え、優!?どうしたんだよ!」
俺は急いで、自分の入っている傘に優の体を入れた。
おかしな行動をした優に驚いて声を掛けたが、何も返してこない。ただ俯きながら、ひたすら何かを呟いていた。
「………ろ、が…。……のま…、……う。」
……何だ、何て言ってるんだ…?
「………武博が…、……の……ら、いな…………!!」
激しい雨の音に混ざって、蚊の飛ぶようなか細い声は、俺の耳には途切れ途切れにしか入ってこなかった。
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