アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
#44
-
頭に乗せられた明良の掌から、じんわりと温かさが伝わってきた。
優しい温かみだった。
その熱に乗るように、明良がそっと話しかけた。
「…………なぁ、タケ。…言葉は返さなくていいから、聞いてな?」
「………………ん…。」
「……優と何があったのか知らないけど、……タケは、優のことを大切にようとしてくれてるんだろ…?」
「……。」
「…………優って、いい奴だもんな。優しいし、人のために頑張れる奴だからな。…俺も、優みたいになれたらって思うよ。」
「……… っ…。」
「………でもさ。…………お前だって優しいよ。…………優のことを大切にして、傍にいてやりたいって思ってるんだろ…?…なら、そのために頑張ればいいじゃないかよ。」
「…………ふぅ……ッ!」
「…………俺には、きっと出来ねぇよ、優を守るなんてこと。…………タケじゃなきゃダメなんだよ。」
「……うぅぁううっ…!」
「……………………だから、泣くなよ。…………お前が泣いてたら、何にもなんねぇだろ。
周りのことなんて気にすんな。
自分のやりたいようにやれよ。
自分のやったことを信じろ。
…………早く元気になって、優のことを支えてやれ。」
「━━━━━━━━━ッッッ!!!!」
言葉にならない叫び声を上げた。
俺は、ずっとそう言ってもらいたかったのかもしれない。
優と光のことで混乱して、自分が優に今まで通りに接してあげられなくて、守ってあげたいって思ってるのに自分が傷つけた。
守ってあげられる自信がなくなったんだ。
でも、明良にそう言ってもらえて嬉しかった。
布団のおかげで明良に顔を見られていないため、声を上げても泣き顔は見られない。
俺は、涙を溢れるままに流した。
泣いて泣いて、泣きまくった。
そして、気付いたら俺は寝ていた。
泣きつかれて眠ってしまったんだろう。
気付いて目を開けたら、目の前は真っ暗だった。
それは、俺の目に暖かいアイマスクが乗っていたからだ。
多分、俺が寝たあとに明良が着けてくれたんだろう。
市販のホットアイマスクがまだじんわりと熱を放っていた。
体の熱もほとんど引き、目もスッキリしていた。
起き上がって明良を呼ぼうとすると、部屋のテーブルに置き手紙があるのに気付いた。
『 タケへ。
寝ちゃったみたいだから帰るな。
キッチンにオニオンスープ作っといたから食べろよ。
市販の風邪薬とホットアイマスク買っといたから、よかったら使って。
早く風邪治して学校来いよな! 明良』
手紙の隣に、コップに入った水と市販の風邪薬のゴミが残っていた。
…………あれ?
その風邪薬は、15歳以上は1回に2錠飲むことになっている。
でも、テーブルに上がっている薬は、4錠目の場所で切り離されていて、そのうちの2錠は空になっていた。
…俺、薬なんて飲んだっけ…?
飲んだ覚えのない薬のゴミが残っていたのだ。
でも、熱で意識が朦朧としていて覚えていなかっただけだと思い、そこまで気にしなかった。
キッチンに行き、コンロに掛かっている鍋の蓋を開けてみた。
まだ温かいオニオンスープの湯気が立ち込めた。
俺はそれを温め、胃袋に納めた。
「……………美味しい……。」
料理の出来ない明良にしては上出来だった。むしろ、明良が作ったとは思えないくらい美味しいスープだった。
俺はケータイで明良に感謝のメッセージを送っておいた。
この分なら、明日には学校に行けそうだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
45 / 162