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#46
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━━ 今日も俺はいつも通りの生活をしていたはずだった。
でも、今俺は怒っている。
目の前のそいつを、強く睨み付けている。
そして、そいつは反省しているとでも言うように、下を俯いて黙りこんでいた。
でも、反省すればいいなんて甘いことでは済ませたくない。
……俺は。……俺と優は、お前のせいで傷付いたのだから。
こいつは、この間俺に言ったはずだ。
時間は大事なものだと。
俺は、こいつは誰よりも時間を大切にしなければいけないとわかってる奴だと思っていた。
だからこそ、俺はこいつを許せない。
あのときの…。
……文化祭で俺に言った言葉は嘘だったのかと思えてしまうから。
『ははは…!優、時間に欲張りすぎ!』
『そんなことない!誰だって思うはずだろ?』
『……それくらい、時間ってのは大事にしなきゃいけないってことだよ。』
━こんな言葉、もうウザったいだけの過去にしか思えない。
━━━ 数十分前。
「皆川ー。皆川いるかー?」
放課後になって帰ろうとしていた矢先、担任が俺の名前を呼んだ。
嫌な予感を感じつつ、担任のところへ行った。
「皆川、今日日直だったよな?このプリントとノートを首席番号順に並べて提出したやつをチェックしていってくれ。」
…………出た、担任の雑用…。
俺は嫌々ながら引き受けた。
受け取ったプリントとノートの数はかなり多く、1人でチェックしていくには辛い量だった。
「終わったら俺の教務室の机に上げておいてくれ。」
それだけを言って、担任は部活に行ってしまった。
この様子を見ていた明良が、俺を茶化しに来た。
「タケどんま~い!頑張れよ~。……しっかし、タケってよく雑用頼まれてるよな。雑用体質?(笑)」
「……うっせ。雑用体質って何だよ。お前も部活だろ?早く行けば?」
「いや、今日は顧問がいないから自主練なんだよ。」
「え、じゃあこれ手伝って、」
「それはない。」
「…ちっ。」
「怒るなって。自主練だからってサボれるわけじゃねぇよ。……じゃ、俺はもう行くな。頑張れよ。」
「…おぅ。じゃーな。」
俺は手をひらひらと振り、明良は教室を出て行ってしまった。
これで、教室には俺しかいない状態になった。
俺は溜め息を1つ吐き、作業を始めた。
…静かになると、俺はつい考え事をしてしまう。
それはもう、優のことしかない。
……優、俺が腕を振り払った日以来、ちゃんと会ってないな…。
ていうか、香織さんに会って話を聞いた日以来か…。
俺が一方的に避けてるだけだったけど、そんなのじゃダメだよな。
……ちゃんと、優と…。
………光と向き合わなきゃ…。
…………………でも、光に会ったとしても、何て言えばいいんだ…。
………優にも、何て言ったらいいんだ…。
作業をする手が止まってしまった。
実際、今まで話していた奴が本当は違う奴で、俺はずっとそいつに告白しちまって、好きだとか言っていたなんていうのが本当かどうかわからない。
それに、俺はまだ本当に光を知っているわけじゃない。
光をちゃんと見たように思えない。
……光は俺のことをどう思ってるんだ…。
「…おーい、武博。手が止まってるぞ?」
ドキッッ
後ろから声が聞こえて、明らかに体が大きく飛び跳ねた。
振り向くと、俺が今の今まで考えていた奴がいた。
「…ゆ、優……………。」
優は部活の服を着ていた。部活の途中でここに戻ってきたのだ。
「また雑用やらされてるんだろ?明良から聞いたよ。武博は雑用体質だってな。」
「だ、だから雑用体質って何だよ!ったく、優も俺のことバカにしに来たのかよ!?」
「違う違う(笑)忘れ物取りに来たんだよ。ついでに、武博どーしてるかなーって。」
「やっぱ笑いに来てんじゃん…。」
「あっははは!かもな!」
「…サッカー部は今日部活自主練なんだろ?手伝えよー。」
「無理言うなよー。一応マネが監視役してて、個人がやってたことを顧問に報告するみたいなんだからさ。」
………あれ。
………………俺、優とちゃんと普通に話せてる。
無意識だった。
何も意識しなくても、前のように優と話せている。
それはつまり、この会話が今までの俺たちだったっていうことだ。
………どうして、あんなふうになったんだろう…。
優は何とも思ってないんだろうな。
俺だけが、こうして………。
「………優…。」
「ん?どうした?」
「………………優はさ。」
「おぅ。」
「………………………俺のことどう思ってる……?」
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