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#68
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保健室に着くと、既に俺たちのクラスの女子の江口さんが保険医の先生に手当てをしてもらっていた。
俺たちが教室に行く前に怪我をしたのだろう。
「……皆川君…。」
「…江口さん…、怪我したの?」
「うん…、ちょっとだけね。……皆川君、肩大丈夫…?」
「………大丈夫じゃないかも。…肩、上げられないし…。」
机がぶつかった右肩は、俺の思うように上へ上がらない。
肩から下までなら動く。だが、手を肩から上にあげようと激痛が走って上がらなくなる。
「それやばいんじゃないの!?先生、病院とか行ったほうがいいんじゃないんですか!?」
「そうね。…今親御さんに電話してみるから、ちょっと待ってて。親御さんが迎えに来れそうなら来てもらって一緒に病院に行って診てもらってね。」
「…あ、親多分来れないんで、俺自分で行きますよ。」
「ダメよ!親御さんが来れないなら、誰か他の先生についていってもらいます。…ちょっと、他の先生に言ってくるから、ここで待っててね。」
そう言って、保険医の先生は保健室を出ていった。
保健室に残された俺と明良と江口さんは、何とも気まずい雰囲気になってしまった。
全員が今までの光の喧嘩のことを考えているのはわかる。
でも、それを口に出していいのかわからず、吐き出せないまま沈黙が続いた。
そして、江口さんが言いにくそうに言葉を発した。
「あ、あのさ…。……さっきの……、山岡君と皆川君のやつって…、本当なの……?」
違う。
俺がそう言うよりも前に、明良が俺の言葉を奪った。
「だから違うって!!何でみんなしてそんなこと言うんだよ!!」
明良の大声に、江口さんは体をびくつかせ、怯えた表情で謝った。
「ご、ごめんなさいっ…。……私も、そんなことないって思ってるから…。」
明良の怒鳴り声のせいで、また空気が悪くなった気がした。
「…………何でお前がそんなに怒るんだよ…。」
そう言うと、明良は内に込めている怒りを抑えきれないのだというのがわかるくらい苛ついた声色で言った。
「……だって、…優は何回も違うって言ってんのに、いくら言ってもあいつらには通じなくて…。……だからあんなに暴れたのに、まだわかんねぇのかよ…!………優は暴れるくらいしてまで、それを信じてもらいたかったのに、ちゃんと伝わってなくて…。…これじゃ、優が先生たちに怒られ損するだけじゃねぇかよ…ッ!」
俺の気持ちをそのまま言ってくれた。
「……じゃあ、やっぱり違うんだよね……?」
江口さんの問いに、俺も明良も黙って頷いた。
すると江口さんは安心した表情を見せ、立ち上がった。
「よかった!…あの2人はああ言ってたけど、クラスの女子たちはそんなの最初から信じてないと思うよ?教室に戻ったら、私からもみんなにちゃんと言っておくね。……だから安心して。」
「……ごめんな、ありがとう。」
「ううん。…じゃ、私はこれで。……皆川君、肩、お大事にね。」
そう言って江口さんは保健室を出ていった。
それとほぼ入れ替わりのタイミングで保険医の先生が2学年の先生を1人連れて戻ってきた。
「皆川君は、先生と一緒に病院に行ってきてね。一旦お家に帰って保険証とかも持ってから病院に行って、学校には戻ってこなくていいからね。…滝澤君は、教室に戻ってください。まだ授業が残ってるでしょ?」
先生は既に教室から俺の鞄を持ってきていた。
鞄を受け取り、明良と一緒に保健室を出た。
「…タケ。……また教室で何かあったら、今度は俺が何とかするから。」
妙に真剣な瞳をさせていた明良。
俺はそれを笑い飛ばし、真剣な明良の気を緩めさせた。
「何言ってんだよ。江口さんだって言ってたじゃん。みんな信じてないって。それに、明良がそんなことする前に先生たちが何とかするよ。」
「俺はそんなに非力じゃねぇよー!ったく…。……肩、すぐ治るといいな。」
「そうだな。…じゃ、何かあったらすぐ連絡するから。」
「おー。じゃあな。」
そう言って、俺と明良は別れ、俺は先生の車に乗り込んだ。
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