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隙を魅せて。36
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―おかしいだろ
「る、類……」
「あぁ知らないんだよなこの子は麻井真生…――俺の彼女」
「っなに、言ってんだよ…るっ」
「俺が決めたんだ、啓ちゃんは口出ししないでくれる?」
「っ…見損なった」
「……」
「いい奴だって思ってたのに…類の馬鹿!」
それだけ言い残すとその場を駆け出した
何があったらそうなるのか緒方にはやはり理解できずどうすることも出来ない
「西園寺さん…」
「大丈夫だから、ね」
「は、はいッ」
――――――――――――
今日の俺の授業は昼までに全て終わる
幸い今日は全校生徒5限で終わる日で、先に帰っても大丈夫だろう
4限が終わった時点で職員室に戻ると帰る身支度を始めそれが終わると挨拶をして回り足早に病院へと向かった
ガラッ
「あぁ、日向先生…」
「こんにちは」
「来てくれてありがとうございます」
病室の前で一息入れると扉を開けた
すると病室の整理をする阿久津に出迎えられ
その姿は平気そうで一先ずホッとする
「今日は少し明るいですね」
「え?」
「なにか良いことありました?」
「っ…その、緒方に…」
「なにかしたんですか?アイツ」
「励まされた…というか」
「アイツが?」
「あぁ、なんか凄く楽になった気がする」
信じられないとばかりにキョトンとして心咲を見る阿久津は今度は軟らかく微笑んむ
「なら良かったです」
「ん、ありがとう」
「礼ならアイツに…」
「礼ならもう言ったよ…じゃなくて阿久津先生が助言したと聞いた、だからありがとう」
精一杯の笑顔を向けるとはにかんで返してくれた
話し出すと女も男も関係なく長話になるもんだ
あまり長く話していた気はしないのだが開いた扉から入ってくる緒方のお陰で時間の経過具合を把握した
「なに話してんの?」
「…今日も来てくれてありがとう」
「そんなの当たり前だろっ」
「そ?じゃあ行こうか」
ベッドのスプリングが軋む音にはっとすると勢いよく椅子から立ち上がった
「どうしたんですか?」
「へ、や、何でもない」
「そう、ですか」
「ほら!長居したら悪いし行こう」
「そうだな」
看護師やら入院中に仲良くなったと思われる他の人からの見送りを受け壮大とまで行かないがその光景は華やかだったように思う
「阿久津先生…あの」
「…ありがとうございました」
「っ…」
「ね?」
お礼と謝罪の言葉をかけようと阿久津を引き留める
それでも咄嗟だったため何をどう伝えていいのか分からず口ごもってしまう
それを見兼ね阿久津はお礼を言う
彼独特の話し方には有無も言えない時がある
―現状だ
「じゃあ俺は帰りますね」
「あ、あぁ」
「また明日学校で」
「あぁまた明日」
阿久津と緒方の二人の背中を見送ると空は微かに薄暗くなっていた
「早く帰ろう」
二人とは別方向に進んでいく
少しの期待に苦しさが込み上げてくる
―緒方と一緒に現れるかもしれない
そんな少しばかりの期待
自分から突き放したのに、我ながら調子がいい
けど会いたいと思うのは…………
「それでね西園寺さん」
「あぁ」
「っ…」
「日向先生…っ」
いつだってお前だったのに―――
目を向けられない。今どんな顔してるんだろう
というかなぜこんなとこで出くわす…
あぁ、そうかコイツの家こっちなんだ…
「日向先生」
っ!
―日向先生…
なんでだよ、胸が押し潰されそうだ
名前を呼ばれただけなのに、それも他人行儀の生徒会長の時に呼ぶ名前―
「俺コイツと付き合うことにしたんで」
「え…!」
「西園寺さん…」
「……それが?なんだよ…はなっからなんもねぇ俺に報告する必要ねーだろ、精々幸せにしてやるんだな」
多分今日一、いや今までで一番笑顔だったと思う
頭の中の整理つかなすぎてわけが分からない
はや歩きで隣をすれ違う
もう、何が起きてるのか理解出来ない
前を確り向けない
足取りが於保つく…
それに、あれは…アイツの隣にいた女
―麻井真生だった
これがお前を守るための罰だっていうなら…
酷い仕打ちだな…西園寺…
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