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隙を魅せて。37
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やっとの思いで家に帰ると電気も付けずベッドへダイブする
心が空っぽになったみたいだ
さっきからあの光景がリプレイされる脳内
「っ…はぁ」
―俺コイツと付き合うことにしたんで
顔がマジだった…
なんの躊躇いもなくそれが当たり前のように
ただ別れてほしいとは言わなかった…
っ、そんなの俺が途中で話を切り上げたからだ…何期待してるんだよ
ていうかショック、受けてんのに涙出ねぇってことはそうでもないとか?
いや、泣きそうだ…なのにやっぱり期待してるんだ
嘘だって何かの間違いだって
「最悪」
好きだって思い知らされた
枕に顔を埋め込むとギュッと抱き締めた
***
ピピピ…ピピピ…
「…」
アラームの音が響き渡る寝室
止めるだけでベッドから降りる気力はなかった
結局一睡も出来なかった…
アイツとなんかあるたびこれはまずい
そう思い意を決すると重い体を無理矢理起こした
―――――――…
おはよう、おはようございます
と、生徒の声が響き渡る廊下
職員室でドカッと荷物を置くと横から聞き慣れた声が聞こえた
「おはようございます」
数日前と変わらず微笑む阿久津に胸が痛んだ
「…おはよう、ございます」
「また、何かあったんですか」
「や、何もない…少し出てくる」
「え、もう朝礼始まりますよ!?」
動揺を悟られまいと目線を下げたままでいると心配そうな声が返ってくる
どんなに隠しても隠しきれない
今は一人でいることが何より幸せな時間だった
本当に少し歩くと直ぐ職員室に戻り朝礼を済ませた
生憎今日は授業が昼からだ
少し落ち着く…ゆっくりできる時間がある
「誰も居ない校舎ってやっぱ静かだな」
静まりかえった廊下をゆっくり進む自分の足音以外には風が窓にぶつかる音しかない
でもそれが心地好い
だからこそ特別教室の多い校舎を選んだ
「それでねぇ…」
「!」
誰も居ないはずの校舎
なのに声…っ
誰だ?
でも確実に生徒―
この声は…
!
…麻井真生―
西園寺…。
っやめろ!違う、アイツなわけ…アイツなわけがない!
嫌な予感に否定的に自分に言い付ける
ここは屋上じゃない、他の生徒かもしれない
そうであって欲しい…
そうであって欲しいのに…
「やだっ、先生よく会いますね…もしかして着けてるんですか?」
手遅れだ。動くことさえ出来なかった自分を悔やむ
耳に残る声をあげたのは言うまでもなく麻井だった
その麻井と腕を絡め出てきたもう一人は西園寺…
皮肉なもんで、会いたい時には会えなくて。会いたくない時には会ってしまう
「1限目からサボるってのはいい度胸だな」
「見逃してください先生ぇ」
「駄目だ、今からでも戻れ」
「えー」
「それに…生徒会長ともあろう奴まで一緒だしな」
嫌味ったらしく西園寺を睨み付ける
「別に、関係ないでしょう先生には」
「先生だから関係あんだよ何様のつもりだお前」
八つ当たりだこんなの。大人気ない
「ちょっと先生そんなこと言わなくたっていいじゃない!」
「はぁ?そもそもサボってんのはお前らだろうが」
「うるせぇな、真生違うとこ行こう」
「そうだね西園寺さん」
揉める二人の仲裁に入るべく口を挟むと見向きもせず心咲の前から消えていく
「っ、授業に戻れ!」
「黙っててください日向先生…」
「っ…」
もう嫌だ…
下に下りていく二人の足音は聞こえなくなる
頬に伝う温かいソレを感じながら屋上へかけ上がった
バンッと勢いよく開いた扉を無視し影になるところに腰を降ろした
膝を抱えるようにして座ると止まることを知らない涙に声をあげた
パタン―
不意に開けっ放しだった屋上の扉が閉まる音がしたのに肩を跳ねさせる
足音はどんどん自分の居る方へと近付いてくる
内心バクバクしながら耐えきれず小さく声を漏らした
「どうして泣いてるんですか…」
急に止まった足音はその姿を影の中へと含ませた
声の主が気になるものの同時にこんな姿を晒した相手でもあるため羞恥で顔があがらない
すると不意に抱き締められる
「なっだれ…」
流石に驚き顔をあげるとそれは―
「結城…」
「なんで泣いてるんですか…」
「っ…」
「会長と、何かあったんですか?」
「なんもねぇよ」
「話して下さいよ、力になりたいんです!」
「……」
「っ僕だったら絶対泣かせたりしないのに」
そういい優しくも強く抱き締めてくる結城の腕を払うことが出来ずただ小さく声を漏らした
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