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死にかけのミドリ。
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「………。」
「………。」
樋口書店は古書街の奥の方にあるため地下鉄の駅まで結構かかる。
……さっき俺が都に謝ってからも相変わらず無言が続き、耳に聞こえるのは隣をトタトタと歩く都の足音だけだ。
……いや、……それは当たり前のことっちゃぁ…当たり前の事だし、……まさか都が俺になにか話してくれるとも思ってはいなかったけど……
……でも、そのせいかいつもよりやっぱり駅までの時間が長い気がする……
さっき目を逸らしてからなんとなく俯きがちに歩いていたが、不意に目線を上げると遠くに見慣れた曲がり角を見つける。
……まぁでも、そんな長い駅までの道のりも、あの角を曲がればもう駅なはず…。
……つーか、都って帰んのあの路線で大丈夫なのか、…??
つい自分がいつもあそこの駅使ってたから、なんも気にせず地下鉄の方来ちまったけど、……
「……、なぁ、お前帰る駅あそこで大丈夫だったか?ーーー……って、…………え、?」
何気なく久々に隣の都の方に目線を動かす、……が、
そこにいるはずの都が隣にいない!!!!
……、はっ……?!?!?!?!
俺、全くわけわからずパニック。
は、……????さっきまでいたよな、?!?!……いたっつーか見てはいなかったけど、足音がついてきたいる事は音でわかってたハズなのに、…
は、待って、……?!!どこいった?!?!
キョロキョロと焦りながら急いで街を見渡す。
ぜんっぜんいねぇんだけど、!!!!
……やべぇ、なんか変な汗でできた……
不意に前、都が資料室で襲われてた事を思い出す。
……やばい、……もしかして、……っ、
そんな嫌な予感が頭をよぎり、俺はパニックになりながらも身体を回転させ今まで来た道を小走りで戻る。
それはもうすげぇキョロキョロしながら、。
本屋、…喫茶店、…地図の店、……蕎麦屋……古本、……花屋…………、……あ、……
………………いた、……。
店の看板と店内を目を皿のようにして順番に探していると遠くに見えた古びた花屋という看板が付いている店の店頭に都らしき男がいるのが見えた。
は、……あいつ、なにやってんの、……
意外と早く見つかったし、つーかなんで花屋なんかにいんのかわかんねぇけど、とりあえず都の元へと走る。
……そのきれいな男は店頭でなぜかなにかを見てしゃがみこんでいる様子で、隣にあの大きいダンボールが置いてあるから多分都で多分間違ってはいないと思うけど、…
「…………っ、都、……っ、。」
少し息を切らして都の隣へ行き、そう声をかけると、そこにしゃがんでいた都がゆっくりと俺の方を見上げた。
「……っ、お前なぁ…、見てぇもんがあんならちゃんと言ってから見ろよ、…。……心配したじゃねぇか、…!!」
ため息をつきながら都にそういうも あ、…こいつ喋れねぇのか、…となんとなく理解した。
いやいや、…それでも「ここ寄りたい」くらいの意思表示はできんだろ、……、、はぁ、…まじで焦った、。
そう思ってギロっと睨むように都を見ると、都はまた俺から目線をもとの所へと戻して目の前の一点を見つめる。
その先には、……鉢植えに植えられた……植物……、、??
焦っていて都以外あんま見てなかったけど…………ここ、……花屋、……
店内に目を向けるとたくさんの生花や鉢植えに入った観葉植物などが所狭しに置いてあり、昼間は外にも植物を出してあるのか少し大きめの鉢が外に沢山並べられていた。
……植物にあんまり詳しくない為、都がなんの植物を見ているのか全く見当がつかないが……、
ただ、都が真剣に見ている鉢だけ他の鉢とは明らかに違った。
…………だってどう見たって…、、その植物は見事に枯れかけていたから。
周りの植物たちは、もう夜だから蕾になってしまってはいたが大きな蕾が付き、暗闇でもわかるほどのミドリ色を持っていた。
……でも、都の前にあるその鉢は、花の気配なんてまるで無く、立てられた行灯仕立ての支柱に絡まるツルからも全く生きてる感じがしない。
つーか、……よくよく見たらこの葉っぱ枯れてね…??
沢山の葉っぱが付いてはいたがどれもしおれていて、下の方とかもう緑じゃなくて黄色、…いや、もう茶色になってるし、……
……これ売りもんにしていいレベルの植物じゃなくね、?笑………死にかけてるし、……。
周りの生き生き生きてるミドリの植物の中に、一つだけ死にかけてるミドリの植物。
都はそれをしゃがんで、他の周りには一切目もくれずただひたすら静かに見ていた。
…俺の中でその光景はなんとも儚い"異"の共演だった。
都はこのその他大勢の中からこの死にかけを見つけ出し、それに引き止められてここで止まってしまったのだろうか。
その植物を見る都の目がなんかいつもと違う。
まるで子供が初めて蟻の行列に遭遇した時のような、…そんなキラキラした目。
カシャカシャカシャ……
都が枯れた植物をみる。俺はそんな都をみてカメラを撮る。
その光景が周りの人から見たら相当変だったのだろう。俺がカメラを撮りだしてからすぐに中からお店のおじさんが出てきた。
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