アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
会話と緊張
-
「瞬ちゃん、ご飯食べよー」
「ちゃんと飯持ってきたか?」
昼休みになって弁当箱を持ち俺に近付いて来たのは、幼馴染みの東條仁と米倉三月。
2人ともすごく優しくて、俺のこときにかけてくれてる。
俺はそれが嬉しくていつも甘えてしまうけど、そろそろ自立しなくてはと思ってます。
2人は俺の机に弁当を広げ、持ってきた椅子に座って食べ始めた。
それから数分後。
「大泉、呼んでるぞー」
クラスの人が、出入り口の方を指差して大泉くんを呼ぶ。
出入り口のところには、女の子が立っていた。
あのこ確か、隣のクラスの…。
大泉くんはちょっと恥ずかしそうにしながらも女の子のところへむかい、少し話した後2人で何処かに行ってしまった。
……告白、かなぁ。
「大泉、やっぱモテるよな」
「うん、うらやましい…。って、そういうみっちゃんも女の子に人気じゃん!」
「まあな」
「うっわー、ムカつく!ね、瞬ちゃん!」
「えっ?あ……あはは」
普通このぐらいの年になると、女の子にモテたいとか彼女がほしいとか思うんだろうけど…俺は別にって感じ。
大泉くんだけ見られればそれでいいって思う。
って、そんなのまるで俺が女の子じゃん。
「瞬ちゃん百面相」
「ほっとけ、面白いから」
放課後。
部活のある仁と三月と別れ、何の部活にも入っていない俺は本屋へと向かった。
今日は、俺の好きな作家の新刊発売日。
少しわくわくしながら店に入り、本を探していた。
「あれ、氷室?」
聞き覚えのある声に振り向けばそこには、いつもの爽やかな笑顔の大泉くんがいた。
な、なんでここに!?
お、俺なんかに声かけてくれて、ほとんど喋ったことないのに……って言うか俺の名前知ってたの!?
つーか、笑顔が眩しい…!
「氷室?どうした?」
「あっ、いや、何も……」
やばい、緊張してうまく話せない…。
「本買いに来たの?」
「う、うん…」
「へぇ、なんて人の本?」
「結構、マイナーだけど……成瀬吾朗って人の………」
「え、成瀬吾朗、氷室も好きなのか!?」
「え……」
「俺も好きなんだよ!」
うそ……。
「マイナーだし、友達で好きな奴いないから話せる人いなかったけど、まさかこんな身近にいるなんて…。ってことは、今日新しいの買いに来たのか?」
「……………」
「…?氷室?」
大泉くんも、好きだったんだ…。
どうしよう。
なんか凄く……嬉しい。
「氷室?」
「あ、ご、ごめん!」
「いや、別にいいけど。どうした、ボーッとして…」
「あ……えっと……。なんか、嬉しくって…あはは」
「…………」
あ、れ、反応がない。
も、もしかして気持ち悪がられた!?
うわ、どうしよう!
「あのっ……ご、ごめん」
「何で謝んの。俺もすっげー嬉しい」
ちらりと見上げると、優しい目をした彼と目が合った。
顔が熱くなってきているのが分かる。
「やっと、目見てくれた」
「え?」
「去年から、喋っても全然目見てくれなかったし、俺嫌われてんのかなぁって思ったけどそうでもないみたいで安心した」
照れくさそうに笑う大泉くんを見て、ドキッと心臓が鳴った。
そんな、嫌うなんてあり得ない。
見ているだけで、話すだけで、笑顔を向けてくれるだけでドキドキして、心臓がきゅって締め付けられて……。
こんなにも好きだと思える人、嫌うわけないじゃないか。
「氷室……」
「あれ、かずくんじゃん!」
「ほんとだー!」
「あ…」
同じクラスの女子たちが来て、あっという間に大泉くんを取り囲んでしまった。
さっき大泉くん、何か言おうとしてた様な…。
「あれ、氷室くんもいるー」
「珍しい組み合わせだね」
女子の視線が集まって、なんだか居心地が悪くなった。
「あ、お、俺、もう帰る、ね。じゃあ!」
「氷室!」
俺は逃げるようにして店を出た。
大泉くんのプライベート邪魔しちゃいけない……それに俺といるよりあの子たちといた方が絶対楽しいし…。
走っていた足を止めて、大きく深呼吸した。
あ、そーいえば……。
「本、買いそびれた」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 36