アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
監禁生活。--虚言--
-
あれから蒼と他愛もない会話を繰り返し
それがいつ終わり
いつ眠ったのか
それも知らないまま功太は朝を迎えた
横ではすーすーと寝息を立てて
功太に寄り添うように蒼が寝ていた
いつだって感情のまま
狂気の沙汰では済まないほど
残酷な事をしてくる蒼からは想像もできない程
落ち着いた会話に
戸惑いを覚えた事だけは記憶にあった
その時の感情は言葉にするには難しかった
いつだって苦痛を与える蒼の事を
ずっと嫌いだ、嫌いだって
心の中で繰り返していた功太は
あの時自分の中に宿った感情を思い返す
あれは....一体......
「...ん....ん、こう....た...」
その記憶を辿る事を阻止するように
蒼が寝言を発した
「こう、た....」
その無邪気な寝言に眉を寄せる
痛めつけたり
優しくしたり
俺はこいつが分からない...。
何を考えているんだよ
俺はこいつが嫌いなんだ
こいつが....
嫌い、なんだ....きっと。
なぜか心に引っかかるものを
功太は無視して決めつけた
「....んっ、....ぁ、おはよ、功太...」
まだ眠そうに蒼が名前を呼ぶ
「......おはよう」
横で寝転がったまま蹴伸びをすると
再度、功太 と名前を呼んだ
「何......」
「僕ね...今日功太の夢みたよ......幸せだったぁ〜」
目を擦りながら、身体を起こす
功太は起きる事無く布団に潜り込む
どうせ起きても、ここからは出られないから。
「それじゃ、僕は準備してくるね。朝ご飯、白井が用意してくれてると思うから、その時また起こすから」
功太の腰の辺りをぽんぽんと軽く叩いた
軽々とベッドから降り
部屋を出て行った
この優しさを見せられた時に
自分の中で沸き起こる感情にうまく向き合えない
もどかしさだけが胸に募り
面倒くさくなった功太は頭まで布団を被った
俺はこいつの事なんて好きじゃない。
そう心の中で唱え続けた
-------------------------
「起きなさい」
柔らかな蒼の声とは違い
威厳のある声が頭の上に降りかかる
少しうたた寝をしていたのか
その声にはっと意識が戻る
布団を退け、顔を出したそこには
相変わらずの
タキシードを着こなす白井の姿があった
「蒼様がお待ちです。早くしなさい」
白井は視線だけを功太に向け
睨み見るような目付きで呟く
この視線が功太は大の苦手だった
起き上がりベッドから足を下ろす頃には
白井は部屋を出てしまっていた
功太を待ってあげる気はないようだ
功太もそのほうが楽だった
起きたばかりの覚束ない足取りで
功太も部屋を後にした
到着したリビングには
朝にしては豪華すぎる程のご飯が並べられ
もう既に着替えも終わってた蒼が
功太へ手を振り合図をした
席に座っても食欲なんてない
蒼が美味しそうに頬張る中
何も食べようとしない功太に
不思議そうに問いかけた
「食べないの?」
怒ってるわけじゃなさそうだ....
「...お腹、空いてない。元々そんなに食べないから...」
功太が怯えたように警戒しながら呟くと
蒼は少し間をおいて意外な返事を返した
「....そっか。そうだよね。功太細いし、食も細そう。食堂でも会ったことないし...。無理して食べなくても大丈夫だよ」
きっと何かされるんだと
言い終わってから後悔した功太は
その返事に戸惑いながら驚いていた
なんで急に...
こんなに優しくするんだよ......
蒼が食べ終わり
白井は車の用意をするために
リビングから出て行った
蒼は席に座ったままの功太の隣に立ち
肩に手を乗せた
「無理して食べなくても大丈夫だからね」
そう言うと肩を優しくぽんぽんと叩くと
あ、と言いながら思い出したように口を開く
「功太の携帯ケースってさ、ここら辺で見た事ないけど、どこで買ってきたの?」
その質問に功太は少し困った素振りを見せた
「あれは...親がお土産でくれたものなんだ..」
「ふーん。どこの?」
間髪入れずに蒼が聞き返す
「......北海道」
小さな声で返事をすると
蒼はまだ足りないのか質問を繰り返す
「お父さん?お母さん?」
「か、母さん.....」
功太は嘘を吐くのは苦手だった
「嘘ついてないよね?」
蒼は穏やかにも問い詰めるように問いただす
小さく頷き俯向く功太の事を
蒼はどんな顔で見てるんだろうか
「分かった。信じる!それじゃあ僕は学校行ってくるね。帰ってきたら楽しい事しよっ」
(楽しい事......)
意外にも機嫌が良いのか満面の笑みで
部屋を出て行く時に手を振る蒼
「あっ、部屋に戻ってて大丈夫だよ。それじゃあ
行ってきます」
去り際にそう言い残し
重い扉は閉まってしまった
「部屋に戻ってて大丈夫.....か...」
完全に拘束は解け、今なら
脱出する事も出来るはずなのに
自ら足を進めてあの部屋に戻っている
俺はここにいる事を望んでいる?
いや違う。仕方ないから..抜け出せないから...
でも今なら逃げられる
だけど怖い
バレたら、見つかったら
またあの時みたいに...
それに
俺が居なくなったら今度は理樹が...
それは
それだけは
嫌だ....。
精神的呪縛は功太も知らない間に
深刻さを極めるばかりだった
そして結局、何も食べずに功太は部屋に戻った
最近は精神的に疲れる事が増えた気がする
功太は眠る気もないのに
ベッドに突っ伏した
1日1日がとてつもなく長く感じる
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
90 / 131