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後悔。--白井side--
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蒼を無事送り届け自宅へと戻った白井は
淡々と業務をこなす
次のやるべき事は
蒼の部屋の掃除ーーーー。
普段なら1番力を入れてこなす仕事だが
今は忌まわしく思う存在がそこにある
だがそこは蒼の部屋
蒼様の部屋ーー。
”彼”を無視するということを
心の中で自分に言い聞かせながら
白井は蒼の部屋へ足を進めた
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扉の前まで来ると一息ついて
それを開く
ベッドの上では横たわる功太の姿があった
蒼のベッドに当たり前のように寝ている事に
腹立たしさを覚えるが
蒼が許している事だ
何も言えなかった
カーテンを開け、部屋の隅から清掃を始める
有る様には思えないホコリ取りや
蒼の机の上の片付け、洗濯物を戻したりと
手早く蒼の部屋を綺麗に仕上げる
あとはベッド全部のシーツカバーを
変えるだけだ
洗濯した綺麗なシーツカバーを片手に
ベッドに近づく
それに気付いたように
功太は白井に怯えたような表情を見せる
この屋敷へ連れてきた時に比べて
功太の顔はだいぶやつれていた
元からの端整な顔立ちは崩れてはいないが
表情は暗く、いつの日か校門で見た
凛とした姿はどこにもなかった
もう拘束されてもいないのに
大人しくこの部屋から抜け出さない
完全に支配されている事に
本人は気付いているのだろうか?
今目の前で対峙している功太は
常に何かに怯え震えているような
そんな感じが見て取れる
まぁ、監禁されているのだから
そうなって当たり前か
「...何...」
暫く白井に見据えられていた功太は
怪訝そうに口を開く
「....貴方はもう身も心も蒼様の物ですね」
その言葉の中には嫌味も含め
功太に対する嫉妬も入り混じっている
発言した後に
嫉妬を露わにした自分に嫌気がさすが
そこは相変わらずの無表情で
カバーできた
功太もその言葉に
少しムッとした様な表情を見せる
本人としては
またあの聞き飽きたセリフ
”俺は誰の物でもない”
などと言いたいのだろう
滑稽すぎて関わりたくもない
そんな事を思いながら
作業に取り掛かろうとした白井に
功太は思いもよらない言葉を口にした
「...あんたは望んでも、あいつの物にはなれない」
白井は動きが一瞬止まる
功太を内心驚いた顔で見やると
功太は怯えながらも得意げな表情で続けた
「あんた、あいつの事好きなんだろ?でもあいつは俺の事が好き.....嬉しくないけど。.....あんたはあいつの物にはなれない」
同じ内容を二度も口にし
白井に向けてほくそ笑む
だがそれは事実だった
白井は蒼の事がもうずっと前から好きだった
だが蒼は気づく事はおろか
他の人への恋心を白井に向けて話す
それがどれだけ辛くて苦しいか
しかもそれを憎いくらいの嫉妬の対象である
功太に言われてしまった
お前に何が分かる....
白井の中で何かが弾けた
いつもなら絶対にやらないーーー
片手に持ったシーツカバーを
ベッドへと叩きつける
驚いた表情で功太と目が合う
そのままベッドへと登り功太に馬乗りになる
私は無表情を作れているだろうか
ふとそんな事を考えるが
今は冷静になる事が出来なかった
ーーいつもなら絶対にやらない
拳を握り、跨った功太の頬に振り降ろす
くぐもった声が聞こえた気がしたが
そんなの知らない。知りたくもない。
「...っ、やめ...っ!」
完全に怯えた声が耳に届き
腕で顔を覆う功太が視界に映る
だがまだいつもの冷静さを取り戻せなかった
白井は覆われた腕の隙間から覗く
細い喉を捉え手を掛ける
かはっ、と渇いた声が上がる
私は蒼様の物にはなれない?
望んでも?
だとしても
何でお前に言われなきゃならない?
お前に何が分かる
蒼様の全てを知っているのは私だ
私だけだ
「...お前にっ、何が分かる..っ!!!」
いつもの敬語は抜け
ただひたすらに首を絞め続ける
ギリギリと力を込め続ける手に
功太は必死に爪を立てながら解こうと手を伸ばす
「...あ”....っは...がっ....」
口がぱくぱくと開閉を繰り返す
功太の眉が寄り苦痛に呻くその目から
力が無くなっていく
死ねーーー。
心の中でそう思った瞬間に
蒼が嬉しそうに功太の事を話す顔が脳裏に浮かぶ
殺してしまってはダメだ。
蒼様が悲しむ
パッと手を離す
ヒュウッ、と空気を吸い込む音が鋭くなり
功太は喉を抑えて激しく咳き込む
その様子を跨ったまま見つめていた
殺したいほど憎いが
蒼様を悲しませてしまうのはダメだ
功太はシーツを掴み
より一層怯えた声を出しながら
許しを乞うように震える
「...やめ...っ、て...嫌、だ....」
白井はその様子に何も言わず
功太の上から退いた
取り乱してしまった事に
今更気づき、シャツの襟を整え
一息つく
「....カバーを取り替えます。退きなさい」
まだベッドの上で呼吸を整えている
功太に向けて冷たく言い放つ
時間をかけてだが功太は一旦
ベッドから足を下ろした
手早く布団とベッドと枕のカバーを
取り替える
蒼にも見せた事がない部分を
こんな奴に見せてしまった
後悔の念しかないが
今更取り繕うことも気が向かない
取り返しもつかない
やることだけをやると
功太を一瞥する事もなく出て行く
自室へと戻る足取りはあまり軽やかではなかった
蒼様にはお見せできない
私は貴方様の事が
好きだから
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