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小瀬の過去1
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言葉が出てこない。
ーー小瀬は、去年の入学式の時からずっと俺のことが好きで。
あの日、俺に告白しようと思っていたら、運悪く俺と涼真のキスシーンに遭遇してしまった。
「……なんの、こと?俺のことを入学式の時から好きって、ごめん、何がどうなって…」
状況が読み込めず、気の利いた言葉が出てこない。
すると、小瀬は一度大きく目を開くと、寂しそうに目を伏せた。
「……やっぱり覚えてないよね。和哉くんは優しいから、和哉くんにとったら当たり前のことをしたにすぎないのかもしれないけど、俺にとってはすごく嬉しかったことだった…覚えてないかな?」
「……ごめん、全然」
小瀬は力なく笑う。静かに斜め上を見ると、目をぎゅっと閉じて何かつらいことを思い出すかのような顔をした。
小瀬の形の良い口が静かに動く。
「俺は、小さい頃からよく虐められていた。容姿端麗、頭も良くて運動神経抜群、おまけに有名財閥のお坊っちゃまときたもんだ。女の子が放っておくわけがなかった」
小瀬が自嘲ぎみに嗤う。
「だけど、男子たちは俺を妬んで誰も俺を相手にする者なんて一人もいなかった。俺が何をしたっていうんだ?特に悪いことをしたわけではないのに仲間外れにされ、虐められる日々。一方で女どもは俺をストックに入れようと色目を使ってくる。……そもそもこんな容姿だから悪いのだ。俺は次第に内向的になり、その顔を隠すために前髪を伸ばして分厚い伊達眼鏡をかけ、息を潜めるようにして暮らした」
「高校生活もどうせ似たようなものだろうと思い、目立たないようにして高校の門をくぐった。暫く下を向いて歩いていると誰かにぶつかった。すると、ぶつかって転んだ拍子に長くしていた前髪が乱れ、眼鏡も外れてしまい、あろうことかぶつかった先輩と目があってしまった。その先輩は溜まっていたのか、俺をじろじろと見るなり『ぶつかったのが悪い』と言って俺をレイプしようと校舎の影に連れていこうとした。……もう、終わりだと思ったよ。だけど、その時だった。ーー和哉くんが助けに来てくれたのは」
小瀬の少し潤んだ目と瞳が合い、どきりとする。
小瀬の寂しそうな笑顔はあまりにも儚く、繊細だった。
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