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17 大会に向けて~マサト君の気持ち~
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あの日、良人さんと夕飯を食べた日、つい勢いで大会のカットモデルになることを決めてしまった。
その日は妙な緊張と、わくわくとした高揚感で胸がいっぱいになり、なかなか寝付けなかった。
そして翌日、久しぶりに良人さんの働く姿を見に美容室へ行くと、あきこさんに写真を撮られた。
『恥ずかしいから嫌だ』
と言ったのだが、大会に向けて良人さんがデザインを考えたりイメージを膨らませる為にどうしても必要だと言われれば、了承する他ない。
そして、足や洋服のサイズを聞かれる。
大会の衣装を準備しなければならないから、控えて置かなければならないらしい。
てきぱきと、必要なことを順序良く終わらせていくあきこさんを見ていると、今更ながらに、モデルを引き受けたことへの責任の重みを感じる。
勿論、一番は良人さんの為で、その為のサポートとしてあきこさんはアシスタントとして自分のやるべきことをこなしているだけだろう。
だが、それは俺の為でもある。
“モデル”の為に、衣装を考え、揃える。
“モデル”の為に、普段の仕事にプラスして忙しい合間を縫って大会の準備を進める。
俺の為に、良人さんやあきこさん・・・いやそれだけじゃなくて、もしかしたら知らないだけでもっと大勢の人が動いてくれているのかも知れない。
大会で、良人さんが良い結果を残せるように・・・。
そう思うと、俺なんかがモデルで本当に大丈夫なのか?と不安になる。
・・・けれど、自分で決めたことだ。
自分の意志で、モデルになることを選択し決意した。
それに美容師の人達の、普段のサロンワークだけでは見ることが出来ない姿を見ることの出来る、またとないチャンスでもある。
・・・やるしかない。
せめて、モデルとして良人さんの役にちょっとでもたてる様、求められることはなんでもやる覚悟でいる。
ブーブーブー・・・。
【こんばんは。
大会で、マサト君をどうカットしたいかをデッサンしています。いくつかパターンを変えてデザインしてるので、マサト君の意見も聞かせて欲しい。今度、空いている時間にお店に来てくれないかな?】
夜遅く届いた良人さんからのメールに、
【明日の夕方でも大丈夫ですか?】
と、返信する。
するとすぐ、
【ありがとう。
これから、こうしてちょくちょくお店に来てもらったり、マサト君にも何かと協力してもらうこともあると思うけど、一生懸命、俺の全てを懸けて最善を尽くすつもりだから、どうか信じてついてきて欲しいです。
よろしくお願いします】
と、良人さんの真剣な気持ちが伝わるメールが届いた。
きっと、今日もこんなに遅くまで大会のために色々と準備をしていたのだろう。
そう思うと、思わず胸が熱くなる。
良人さんの大会に懸ける情熱を、美容師としてカットに懸ける熱意を、俺はこれからもっと身近で感じることが出来るのだろう。
そうして大会でモデルとして創り上げていく良人さんの作品となれることに、誇りと自信を持てるよう俺も最善を尽くしたい。
【良人さんがやりたいように、やりやすいように、俺も、俺に出来ることであれば、なんでもします。一緒に頑張りましょう】
良人さんに、俺の今の気持ちを正直に伝える。
良人さんの返事は、
【ありがとう】
っていう簡潔なもの。
けれど、今、確かに良人さんと俺の気持ちが同じ目標に向かって一つになっていることを感じる。
大会まで、あと少し・・・。
今までに、こんなに何かに一生懸命な気持ちになったことがなくて、こんな気持ちになる自分に、正直戸惑いがないわけじゃない。
けれど、何が出来るかわからないけど、やるからには全力で頑張ろうと思った。
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