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今回の撮影テーマは、王道学園ボーイズラブ。
AVなためドラマよりかストーリー性はないが、セックスの前に少し学園生活ドラマがある。そして、その後に帝の告白から始まり、両想いになったところで、性欲有り余る学生らしくセックスへなだれ込む。そんな1本になる予定だ。
「はい、カット! 少し休憩を挟みまーす!」
帝の効果が発揮されているのか、馨のミスもなく撮影は進んでいて、今のこのシーンで学園生活の撮影は終わりだ。
撮影を終えたエキストラたちが、お疲れ様でした、と帰っていったり、ギャラリーに混ざったりしている。
ここからは、馨と帝だけで撮影だ。
ふう、と馨が一息つくと、帝がポンポンと頭を叩いてきた。帝を見れば優しく微笑まれて、じんわり熱が溢れる。
学生服姿が似合っていてかっこいいし、何か間違えそうになるとフォローに回ってくれる。帝はズルい。そんなのでは余計に好きになってしまうではないか。
「帝くん、馨ちゃん、お疲れ様。この後、告白シーン撮って、そのままキスからの本番までカメラ回すからね」
監督の言葉に、はい、と二人で返事をする。
告白シーンからの、キス。そして、セックス。
馨はセックスシーンの撮影前には毎回緊張しているのだが、今回は好意を寄せている帝との共演。今までの緊張を遥かに越えているのは確かだった。
さらには、セックスシーンには台本がない。監督曰く、若々しい学生なんだから、自由に教室で盛っちゃって! らしい。
ベテランで、No.1の帝ならともかく、あれこれ指示してもらった方がやりやすかった馨にとっては、これが大きな痛手となっている。
帝が相手ならば違うのだろうか、と感じていたが、どうして上手くいく方向で考えていたのだろうか。ちっともそんな気がしない。
「馨さ、なんだかんだ、うまくやってけてんじゃん。次も頑張ろーな」
「うん、ありがとう。次も頑張るからよろしくね……?」
「あー、苦笑い。緊張してる? 大丈夫だって馨ならやれるよ」
「そ、そうだよね! うん、大丈夫」
いやいや、そんなわけないだろう。むしろ、逆だ、逆!
馨は、すぐさま心の中で自分にツッコミを入れた。
「馨」
名前を呼ばれて振り向けば、三津田がいて、その顔が微笑みを浮かべていたものだから、
「あ、みっちー! 僕、どうだった? やれば出来るでしょ!」
「調子に乗るなー」
抱きつこうとしたら、額を平手打ちされた。ペチン、といい音がしたし、勢いをつけていたので、地味に痛みが走る。
馨は両手で額を押さえつけながら、三津田を睨み付けて言った。
「あいたっ……みっちー、そこ誉めるとこ。誉めて伸ばすとこ!」
もうひとつ怒ってるぞアピールで、ぶう、と頬を膨らませ、唇を尖らせる。
「はいはい、よくできました……まあ、ほんとよくやってるよ。ほら」
「わあ、ありがとう。みっちー、大好きー!」
が、三津田がアイスコーヒーを出した瞬間、馨の顔は、ぱあ、と輝いてすぐさま満面の笑みへと変化した。
一方の三津田は、この単純バカめ、とでも言いたげだ。
そのまるでコントみたいな一部始終をずっと見ていた帝は、もう耐えられなくなって、ぶはっと吹き出した。
「ははっ、ほんとお前らおもしれーな。見てて飽きねーよ」
「馨がアホなだけにな」
「何だとー!?」
またプンスカ怒りだす馨に、笑いを止められそうにない。
「ふは、まあ馨は天然つか、分かってないよなーほんと……それ、一口ちょーだい」
帝は痛む腹を押さえながら、馨の持っている缶コーヒーを取り上げて一口飲んだ。
その時に三津田の眉が寄せられたのを、はっきりとこの目で見て、口角が自然と上がる。
この光景が面白くて堪らない。
「え、どういうこと。何が、何がっ?」
本当に何もわかってない馨も。
「帝ー。飲んだ分の金払えよ」
声は柔らかくても、じっと睨んでいる三津田も。
「ええ、みっちゃんケチだな。金、金ってみっちゃんやらしー」
「みっちー、やらしーだって」
「お前らうるさいよ」
そして、何かが動いている自分自身も。
本当に、面白い。
短い休憩は、あっという間に終わった。
ここから正念場。スタッフたちが忙しそうに、準備を進めている。馨や帝も服装や髪を再度セットしてもらい、それぞれの立ち位置へ着く。
緊迫の空気の中、監督の声かけと共に、カメラが回り始めた。
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