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過去(優視点)
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その姿を見た瞬間、私はその子を犯している男に掴みかかった。
その時の私は、とにかくその子を助けようと必死で、その子の異変に気付く事が出来なかった。
必死にその子から男を引き剥がし、その子に伸ばした私の手は、その子に触れる直前、大きな叫び声と共に触れられる事を拒まれる。
私にとって、これが、人から初めて受けた拒絶だった。
その子は、自分を守るように身体を抱き込み、ずっと身体を震わせていた。
私は、たった1度の拒絶で、その子に再び声を掛ける事が出来ず、その子が驚かないよう静かに警察に連絡する事しか出来なかった。
警察に連絡し、もう1度その子を見れば、小さな声で何かを呟いている事に気が付いた。
少しだけ近づいて、耳を傾けて聞いてみれば、「お兄ちゃん、助けて」とずっと繰り返していた。
その声を聞いても、私はやはり声を掛ける事が出来ず、ただ立ち尽くしていた。
その子の目が、目の前に居る私に気付かないくらい何も映していない事に気付いてしまったから。
暫くして、警察のサイレンが聴こえ、事情聴取の為その子とは別れた。
そして、気が付いた時、私は病院のベットで横になっていた。
何故、病院に居るのかは分からなかったが、今までの事全てを覚えているのに、何故かその子の顔や名前だけを思い出す事が出来なくなっていた。
私が目を覚ました時、丁度病院に来ていた母が、1ヶ月眠っていた事を教えてくれた。
入院中にも色々あったが、入院生活を終え、家に帰れば、隣の家には誰も居ず、母から引っ越した事を聞いた。
私は、その子と出会う前の元の生活に戻った。
事情を詳しく知らない友人からは、私を元気付ける為か前よりも遊びに誘われるようになり、誘われる度に遊び回っていた。
ただ、入院していた分の勉強を取り戻さなければならず、遊びながらも必死に勉強した結果、大学に無事合格する事が出来た。
そして、卒業式前日、突然1通のハガキが届いた。
そのハガキには、ただ1行"会いたい"という言葉と場所が書かれていた。
そのハガキを見た瞬間、会いに行かなければいけないと直感で思った。
けれど、私は会いに行く勇気が持てず、次の日には卒業し、家を出た。
4年後、大学を卒業した私は、無事試験に合格し、警察学校で訓練を受け、父と同じ職業に就いた。
あの出来事が、私の警察官に対する考えを変え、明確な理由を持たせてくれた。
しかし、私の中から勇気を出せなかった悔しい思いが消える事は1度も無かった。
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