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File.13.5
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【記憶と心、どちらを選ぶ?】
*
パーティが終わり皆が部屋へと戻った。
後片付けを手伝おうとしたがメイドや安元に止められてしまった。
「管理者様に怒られてしまう」、と。
希偲は管理者などとは面識などあるはずも無くどういう人物かは分からない。
だから、自分のせいで彼らに何かあっては困る。
「希偲様、お休み前のティータイムとしましょう」
「誰が部屋にまで入ることを許可したのかしら。認めたわけではないと言ったでしょう?」
希偲はむすっとした顔で福山へと言い放つと福山は吹き出すように笑った。
「希偲様はツンデレなのですね」
少し困ったように眉を下げつつ笑う福山は入れ終わったコーヒーとココアをテーブルと置き希偲を呼ぶ。
「誰がツンデレだ!君は失礼なやつだな」
憤る希偲は嫌そうな目で福山を見るとテーブルの前に置かれたソファにドカッと座った。
「ふふっ、申し訳ありません。喜びのあまり浮き足立っているのかもしれません」
「そんなに喜ぶことなどあったか?」
「希偲様に私をSSとして仕えさせていただくこと、希偲様からのプレゼント、この時間、そしてあなたの崩れた敬語。すべてにございます」
「‥‥っ」
福山は嬉しそうに言うと希偲にココアの入ったマグカップを渡した。
マグカップがほんのり温かくなっており中身はちょうどいい温度になっていた。
「希偲様、これを」
「何ですか?」
渡された包みをそっとゆっくりきれいに剥がして開けていく。
透明なプラスチックの箱の中には可愛らしい猫の刺繍の入ったハンカチと猫の形をした宝石のついた長めのピンが入っていた。
宝石の色は紫色で鮮やかに且つ鈍く光っていた。
「クリスマスプレゼントです」
「‥‥ありがとうございます」
そう言うと、早速ピンを前髪へと飾りつけた。
すると、その瞬間鈍い痛みが頭を駆け巡った。
「‥‥っ?!」
『希偲、愛しているよ』
『‥‥っ、うん。私も愛してるよ、潤』
「じゅ、‥‥ん、?」
「?!」
思考と視界が定まらず眩暈がする。
頭痛とともに1度にやって来て吐き気もしてきた。
立ち上がらなければいけないのに立つことどころか指一本動かすことすらままならない。
唯一良かったの硬直状態でお気に入りのマグカップを落とさずにすんだことだろう。
「希偲様!」
「え?、あれ‥‥、この光景どこかで‥‥」
「希偲様‥‥、何も思い出さなくていいのですよ。」
福山がそう言い手で目を隠すと希偲は意識を失い倒れソファに突っ伏した。
マグカップは福山がしっかりとキャッチしテーブルへと。
「あなた様は思い出さなくていいのです。私のことなど‥‥、忘れてくださって構いません。だから、記憶を失ったとしてもその美しく豊かな感情だけは忘れないでください」
流れた一筋の涙は誰にも知られることなく床へと落ちて乾いて消えてしまった。
*
【そして僕は君の記憶から居なくなる】
(俺のことは忘れていいからどうかその笑顔よ、消えないで)
「お願いです、神様。俺との記憶なんて無くていいから彼女から‥‥俺の初恋の人から笑顔を奪わないで」
(それは何度目の初恋だろうか)
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