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教頭は類のお尻からサッと手を離した。
”助かった…”と類は安堵する。
そして一刻も早くこの場から立ち去るため、
先ほどのエースの問いに答えた。
「エース、俺が代わりに行くことになった。」
「えっ、蔵本先生が?
……そうですか。分かりました、
失礼します。」
そう言ってエースは職員室から出ていった。
”一緒には行ってくれないんだな”と、
類は心の中で自嘲ともとれる笑いをする。
「では僕も行きますね。
せっかくのお誘い、ありがたいんですが
お酒とかあんまり飲めないんで遠慮します。」
”ほんとはウォッカとか飲めるけど…”
類はそそくさと二年三組へと向かった。
ガラっ…
「うぉー!蔵本先生だ!!」
「はぁ…今日もかっけー!!」
「この方に数学を教えてもらえる日が
くるなんて生きてて良かったー!!」
察しの通り、類は生徒から絶大な人気を
得ている。類が教室に入った瞬間、
その部屋の気温はニ度ほど上昇する
という伝説があるくらいだ。
その例にもれず、この教室も
ヴォルテージが一気に上がった。
金髪の少年を除いて……。
「はいはい、静かにしろー。
日直、号令してくれ。」
「はっ、はいぃい!姿勢、礼!」
「お願いします!」
「はい、よろしく。」
こうして数学の授業が始まった。
「……して、こうなる。ここで
さっき紹介した解法を用いて解を出す。
ここで重要なのが出てきた解が条件に
あっているかを吟味すること。よって…」
教壇に立ち、話す類を
エースはじぃっと見つめる。
”生徒からも……
大人からも人気がある。
でも、みんな類にぃの
ほんとの姿、知らないもん…”
エースは机にうつぶせになる。
耳に入ってくる類の声が心地いい。
エースはそのまま寝てしまいたかった。
もう一度類を見たくなり、顔を上げると
類とばっちりと目があった。が、類は音速並みの
速さですぐにそらした。
”なんだよ、類にぃのバカ…。
そんなにはやくそらさなくても…。”
「じゃあ授業時間も残りわずかだし趣向を変えて
誰かにこの問題を解いてもらおうかな。
誰か前に書きに来て。」
その類の言葉を受け、教室は騒がしくなる。
「ほぼゼロ距離で先生の前で問題解くの?!」
「ぜってぇ集中できねぇよ…!」
「あぁ、先生の目の前で問題を解く
日が来るなんて…生きてて良かったー!!」
”あぁもう……うるさいな……!!”
「先生、僕が解きます。」
そう言ってエースは手を高くあげた。
「おう、じゃあエースに任せる。」
さらに教室がざわめく。
「うわーやっぱ手あげとけばよかった…!」
「ちっくしょ…。あれ、でも
これなんかムズくね…?」
ある生徒の言葉に類はうなずいた。
「おっと、さすがだな。
この問題は旧帝国大学の一つ、
O坂大学を目指す者のためにつくった
俺の世界に一つだけの問題だ。」
「世界に一つとかどんだけレアなんだ…!」
「エースくん、できるかな…。」
「数学が得意なエース嬢でもさすがに…。」
カッ、カッ…
「!!」
「ほうほう、いい感じじゃん。
ていうか、数学得意になったんだな、
エース嬢。」
「……からかわないでください。
昔とは違うんですから。」
「はいはい、さーせんでした…!」
カッ、カッ…
「……終わりです。」
「…うん、完璧。満点だ。」
類は笑みを浮かべてエースの頭をポンポンとする。
”エース、わり算教えてやるから、
もう泣くなよ~!今度は100点目指すぞ!”
”このドリル終わったらおやつ食べような!”
”エース、すごいぞ!類にぃも嬉しいよ!”
「エース、よくやったな。」
そう言われ、エースは我に返った。
大好きだった笑顔、いや
今でも大好きな笑顔がすぐそこにある。
様々な雄たけびがあがる教室の真ん中の
教壇でエースは類にだけ聞こえるように
言った。
「類にぃのほんとの笑顔、僕以外に
見せちゃだめだからね…。
類にぃはもっとモテるってこと
自覚してよね!職員室でも、
僕が入らなかったら……。」
それを聞き、類は微笑んだ。
「……うん。これから先もずっと
お前と一緒にいられたら、
お前だけにしか見せない俺の顔、
たくさん見れるかもな。」
「……うん、きっと見せてね、類にぃ!」
二人は他生徒から見えない、
教壇の下で手を握った。
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