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ヒーロー計画4
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風に当たりながら目を細めていた木織は、唐突な大樹の質問にも慌てることなく時間をたっぷりと使って大樹に視線を向ける。
いつだって彼のペースを崩すことはできない。そんな彼のペースを崩すやつを見てみたい気もするが閑話休題。
「例と言われても……この学校で噂なんて腐るほどあるからね。と、いっても君が興味を示すものといえば。そうだね、転校生のことかな?」
「てめえは、いちいち回りくどいんだよ。そうだ、転校生が来るって、しかも相当なワルらしいじゃねえか。2年の進級早々、人殴って退学だとよ」
目をキラキラと輝かせる大樹だったが、口元はニヤリと不敵に笑みを浮かべ、まるで世界征服をたくらむ悪の総司令官のよう。
電気もつけず、窓からの明かりを背後に受けた大樹は、デスクの上で指を組み、クツクツと笑いを噛み殺していた。
「まあ、今の君の方が何倍も悪党っぽくはあるけれどね」
首を横に振りながらため息とともに放たれる木織の言葉に、心外だというように大樹は言葉を続ける。
自分は正義の味方だ。嫌々ではあるが、風紀指導を実施し、校内の見回りなども欠かしたことがない。生徒たちが挨拶をすれば返すし、規則違反をしている生徒がいればきちんと注意する。
それのどこが悪党なのだ。本気で驚いていると、
「君のその献身的な行動にはいつも感服するが、なんというか、思想自体が悪党よりというか……」
木織にしては珍しく言葉を濁す。
その間に残りの委員たちも集まってきたのでその話はそこでお開きとなった。
悪をすべて滅ぼし、善が世界を回すという大樹の計画のどこが悪の思想なのか。
大樹は首を捻り、生徒たちに演説している木織の背を見つめたのだった。
***
ゴールデンウィーク明け、転入生がやってきた。
その知らせを聞いた大樹は、授業中にも関わらず窓の外をじっと見据える。その転入生が通らないか、寮への道を、目を凝らしてひたすらに待った。
途中、教師が自分の名を呼ぶことに、煩わしくもあったが素直に立ち、問題の解答を上の空で答えると再び座る。話半分ではあるが、授業内容な理解していた。
目的の人物が通ったのはその時だった。
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