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ヒーロー計画25
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なぜこんな嫌な気持ちになっているのか、このもやもやと霧がかかったような気持ちの悪さはなんなのか。彼の思案はどこまでも続く。
教師が声をかけてもチャイムが鳴っても、彼の重量感のあるまつ毛が一定の間隔で開閉を繰り返すだけ。それでもおもむろに立ち上がると、授業に必要なものを一式持って廊下に出た。
朝は晴れていたはずの空模様は下り気味。遠くから分厚い雲が波のように押し寄せてくる。今夜も雨が降るのだろうか。
大樹は、廊下を歩きながら、怪人の恰好をした匡がつまらなそうに佇む姿を思う。大樹がしたかったヒーローショーはこんなものだったのだろうか。幼少時に熱中したヒーローショーは悪役だって輝いていたはずだ。
彼はその場に立ち止まると、そっと目を閉じた。
クラスメイト達が、突然立ち止まった大樹を気遣わし気に視線をやるが、声をかけていい雰囲気でないことは明らかで。彼らが戸惑っている間に、大樹は何事もなかったかのように歩みを進める。前をまっすぐ見据えると、首を振って自分の考えを打ち消した。
きっと気の迷いだろう。すべてがうまく行き過ぎて柄にもなく不安になってしまっていただけだ。そう、自身に言い聞かせた。
地面に水玉がポツリポツリと落ちていく。すぐに水玉は上書きされてその形も判断できなくなった。
***
ジリジリと照り付ける日差しにも負けず、青々と生い茂る草木とは対照的に、
「てめぇはいつまで俺の部屋に居座るつもりだ……」
匡はげんなりとした声で、正面の大樹に問う。
放課後、毎日のように勝手にやってくる大樹。なぜか合鍵まで作られており、入手先は不明。最初は追い出していたのだが、あまりにもそれが毎日続くので、匡はあるときすべてを丸投げした。
その結果、大樹がまるで我が家のようなにふんぞり返って座椅子を陣取るという、なんとも言えない、ある人々が見れば贅沢な、匡にとっては、ただはた迷惑な光景が見られるようになってしまっていた。
彼は背もたれに深く凭れかかり、長い足を優雅に組んでいる。ただ、怠惰に身を任せているのに過ぎないはずなのになぜか絵になる彼の姿を、匡は苛立たし気に睨む。
「はぁ? そんなの、お前が俺と別荘に一緒に行くって言うまでに決まってんだろうが」
「だから、夏休みは実家に帰るって……」
「そんなお前の予定など知らん」
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