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ヒーロー計画32
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「俺、用事ができたから帰る」
「駄目だ」
即答。その答えが返ってくることは予測済みだった匡は、こめかみに手を置いて目を瞑り、大きくため息。
「母親が結婚するんで、イタリアに来いって連絡がきた」
端的に言うと、ベッドから降りて鞄を掴む。
「は? 今からか?」
「そうだ。ここに航空チケットが届くから受け取り次第向かえって」
「なんでてめぇの家族がこの別荘の場所知って、というか、横暴すぎだろ」
「お前が言うな。相手が忙しい人だからその日しか無理だって」
「その日っていつだよ」
「3日後だ」
「却下」
子供じみたすね方をする大樹に、匡がうんざりしているとまた着信音が鳴る。
「あ、涼ねぇ。信司さんから今確認の電話があった。ああ、行くよ」
「駄目だって言ってんだろ」
「ちょ、邪魔だ。どけっ。――あ、いやこっちの話。何の問題もない」
「なんだよ。てめぇ、俺と家族どっちが大事なんだ」
「家族に決まってんだろうが。ほら、朝ごはんできてんならお前、先に食ってろよ。――うん、分かった。すぐ出れば間に合うと思う。着いたら連絡するから。じゃ」
通話を終えると、半眼の大樹に睨みを入れる。
「お前は昔の俺の彼女かっ。いちいちなんでも詮索してきやがって」
「いや、昔の彼女なんて知らねえし。詮索って言ったって……つうか、お前彼女いたのか」
「……何だよ。いたら悪いのか」
「悪くはねえが、予想外だ。よくお前、そんな凶悪面に惚れる女がいたもんだ……」
「心底感心すんなよ。俺だってそれくらいいるわっ。もういいだろ。腹減った。あと、ポストはどこだ。チケット届いたか確認する」
話を打ち切りたいのか、大股で部屋を出ていく匡に、大樹は、
「待てって、馴れ初めはなんだよ。昔ってことは、今はいないのか? おい、答えろって」
楽しそうに後に続く。ドアを閉めると、からかい口調で匡の隣に着いた。部屋の中に、匡の鞄が置かれたままになっていた。
食堂には数十人が一堂に座れる長テーブルが中央に鎮座し、過剰なほどに装飾が施された部屋の中でも一際存在感を表していた。
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