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ヒーロー計画34
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「黙ってないで何か言えよ」
無言で見つめられて居心地が悪くなったのか、匡は視線を逸らすとコーヒーを啜る。苦そうに顔を歪めた。
朝食を終えると、二人で食器を洗い片づける。
「おい、航空チケットの件だが」
「ん、ああ。なんだ? 届いてんならさっさとよこせよ」
匡が泡だらけの濡れた手を大樹の前に突き出す。その態度が気に入らない大樹は、ピキリとこめかみに血管を浮かべながら、その怒りを抑えて口角を上げる。
「賭けをしようじゃねぇか」
またか。匡は手を下ろすと、目を固く閉じる。それから時間をかけてゆっくりと開けると、ジトッとした目で大樹を見やる。
「絶対に、俺は結婚式に行くからな」
「俺からチケット、奪えるもんなら奪ってみろよ」
バチバチと火花を散らしながら戦闘態勢に入った。大樹はポケットから取り出した封筒を人差し指と中指で挟んで挑発する。
「望むところだ」
そして、振り上げられる匡の拳。
「ちょっと、待て。暴力は無しだ。俺がこの屋敷の中に隠したチケットを探せ」
「何言ってんだ。そんなお前に有利な方法、俺が許すとでも思ってんのか?」
ジリジリと詰めていく匡に、大樹はなだめるような口調で、
「俺が本気になったら強いぞ。お前なんか目じゃねえ」
「そんなの、やってみないと分からないだろ?」
「なんで、お前はそう好戦的なんだ。暴力は何も解決しないぞ?」
「黙れ。お前がチケットを渡さないのが悪い」
不毛なやりとりは前回同様だが、今回はどうしても匡が折れることはなかった。
「チッ、まあいいか……」
頑なな匡に屈した大樹は、あっさりと封筒を渡す。匡がひったくるようにして奪うと、大樹は片眉を上げ、彼に手のひらを見せながら一歩下がった。
「……チケットは、どこだ」
「何のことだ?」
封筒の中にはあるはずのチケットはなく。空っぽの封筒を無言で裂くと、匡がギロリとねめつけた。
「だから、言ってんだろ? 隠されたチケットを探せって」
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