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ヒーロー計画50
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「おい、それ。絶対体に悪いから食べない方がいいぞ」
調理者本人からの言葉に、千里は手を止める。
「話は季から聞いてます。兄弟そろって料理音痴だって」
「ん、ああ。禁止令が出てるって何度言っても手料理が食べたいってあいつが聞かなくて……作ったら作ったで文句言いだすから捨てようとしたら、お前らに残飯処理させようとするし、マジうぜえ」
少々話を改変しながら、大樹を悪者に仕立て上げた匡。実際悪いのは大樹なので、罪悪感など抱くはずもない。千里が匡に同情的な言葉をかけ、それを匡がありがたく受け取る。そんな会話を続けていると、季が突然立ち上がった。誰にも注目されることのない特性を生かして3年の輪の中に割って入る。
「水渓さん、あんな料理でも匡にぃはあなたのために作ったんです。責任もって全部食べてください」
季の真剣な口調に、言い争っていた3人が驚いて止まる。
「お前に、何でそんなこと言われなきゃいけねえんだよ。関係ないだろうが」
苦々しそうな口調で大樹が反論するも、
「……っ、関係あります。匡にぃは僕の兄です。前にも言いましたよね。匡にぃを悲しませたら許さないって」
興奮しているのか肩で息をし、声を荒げる。しだいに目からは涙があふれ、分厚い眼鏡の奥から涙が頬を伝って流れて行った。
大樹はそんな季を苛立たしげに見ていたが、舌打ちをしテーブルの前のフォークを乱暴につかむ。一口頬張ると、噛み砕き飲み込む。そして季を振り向き、
「悪かった。これは俺が責任もって食うから……もう帰れ」
居心地悪そうに言い放ったのだった。
「それにしても、季の奴。お前に啖呵切る姿カッコよかったな。さすが我が弟だ」
季たちを半ば追い出すようにして二人きりになる。
ブラコン発言をかます匡に大樹は半眼を向ける。乱暴に椅子に腰かけると、匡の視線を避けるように背を向けた。そして、比較的まともそうな形状をしている皿を取ると、無言で咀嚼する。
噛めば噛むほど口の中に広がっていく謎の苦味の正体や、ゴムを噛んでいるような触感がいつまで続くのか、終わりは来るのか不安になる気持ちなどが複雑に交差する。
そんな思いを知ってか知らずか、匡の興味の矛先は自分の料理には向けられず、
「それで、悲しませたらなんとかって……季と何話たんだ?」
先ほどの大樹と季の会話に集約する。
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