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ヒーローとは2
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「この俺がお前に物をくれてやるって言ってんだろうが。何を遠慮することがある?」
「遠慮じゃねえ。そんな不審物受け取れるかっ。中身はなんだっ?」
「プレゼントは贈られた方が開けるのがマナーだろうがっ」
「お前にマナー云々を指摘される謂われはねえよ」
「いいから受け取れって」
グイグイと互いに受け取る受け取らないの攻防を繰り返し、
「何なんだよ、一体っ」
結局は匡が押し負けて箱を受け取る。光沢のある黒いリボンをほどき、蓋を開けると、
「チョコレートだな?」
「そうだ。紛うことなき純然たるチョコレートだ。他意はないから食べてみろ」
一口大のチョコレートが一粒入っていた。大樹は尊大な態度で頷く。彼の言葉は明らかに他意があることを示していた。
「いやいや、どう考えてもおかしいだろ。文脈なさ過ぎて不信感しかないぞ」
「何を言っているんだ。どう考えても自然な流れだったろ? お前の部屋に勝手に入って勝手にくつろいで戦隊ヒーローについて語って扱き下ろされて……キ、キモい呼ばわりされて……」
自分で言っていて虚しくなったのか、徐々に小さくなっていく大樹の声に、
「わ、分かったって。食べるからっ。お、落ち込むなって。な、な?」
無駄に明るい声を出して大樹を励ます匡。
「……本当か?」
ちらりと上目遣いで匡を見る大樹。
「マジマジ、今日ろくなもん食ってないから、腹減ってたんだよ! ……つーか、なんで俺がこんなに必死にならにゃならんのだ?」
後半はもちろん大樹に聞こえないように言いながら、無理やり笑顔を張り付けて笑う匡に、大樹がパッと顔をほころばせる。
「そうか、なら食え。今すぐにだ」
有無を言わせない高圧的な態度に、匡は一瞬殺意が湧きはしたもののそれに気が付いた大樹が目を潤ませて彼を見る。
「っあーもうっ。食べりゃいいんだろ。食べりゃ」
ほとんどやけくそになりながら、チョコレートを口の中に頬り込む。コクのある甘さが口の中に一気に広がり、それからほろ苦いとろりとした液体が舌にまとわりつく。ピリピリとした刺激が断続的に続き、次第に熱くなっていく口内。大きくなる鼓動。遠のく意識。
「最高級のウィスキーボンボンだ。酒が飲めないって言うがこれくらいならいいだろ?」
「だ、めに決まって……」
したり顔の大樹を見ながら、匡は意識を完全に手放した。
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