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強靭な精神力(別名を無神経ともいう。)2
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タオルをふんだくりガシガシと乱暴に体をこする。
いたるところが痛む気がしないでもなかったが気にするほどでもなかった。
人間の体は存外強靭にできているらしい。
まわりかけの洗濯機に使用済みのタオルを投げ込む。下着を立ったまま穿く。
「おい」
「はい」
そんな様をまじまじと見られて気にならないわけがない。
「何見てんだよ」
「先生、案外素顔はかわいい系ですね」
素っ頓狂かましてくる真顔に一瞬で引いた。
「濡れ髪もヤラしくて本当に犯したくなります」
まるで授業の話でもしているかのような真顔だから余計恐ろしい。
「だから悪戯したって?冗談じゃない」
態とおどけて鼻先で嗤う。
櫻井は忠実な犬のように朔良を見ていた。
「あまり人をおちょくるなよ」
言い切ったあとにかち合った目で、言葉が色を無くす。
強引に首筋を引き寄せた眸が激情を滾らせて迫ってくる。
「アンタは冗談やおちょくりで人に好きだなんて言えるのかよ」
数センチに迫った唇が、一息に吐き出す。
触れそうに迫った唇よりも、凪いだ眸の奥に宿った激情が朔良の息を詰まらせる。
臆せず人を好きだといえるのは子どもだからなのか。それが櫻井陽樹という男なのか。
「朔良が好きだ」
鋭い詰問口調に、きつく瞼を閉じた。
首筋に回された手が、すると解かれる。
「好きになってもらえるなら、ココロが先でもカラダが先でも変わりないだろ?」
「っ……」
左胸に吸いついた唇が、赤く鬱血の痕を残す。
「俺の気持ちを否定するなら、何度だって言ってやるし、体に叩きこんでやるよ」
その鬱血を軽く掌で押し、櫻井はまた、あの強い眸で見つめてくる。
「い・や、それは・ダメだ。」
思ったよりか細い声が出て自分が一番驚いた。
———ダメだろう。
こんなこと過ちと認めて忘れて、明日からは普通の生徒と先生にならなきゃならなくて、恋愛感情なんてお互いにあっていいはずがない。
「なんで?」
「なんでって」
それが通りだからだ。
世間的に許されることじゃないからだ。
「確かに、先生すぐに顔に出そうだ」
空気を緩めるように笑い、櫻井の手が朔良の頬に触れる。
「でも、先生にそういう顔で見てもらえるなら、俺、全部投げ捨ててもいい」
そう言った櫻井の目の中に、誘うような顔の男がいる。
それが自分であると判別できた時には羞恥で首まで赤くなった。
「馬鹿言ってんじゃねぇ」
その手を払い、顔を背けると、むき出しになった首筋を太い指が撫でた。
慄いた体に鳥肌が立つ。
「カラダを落とすのは存外簡単かもしれませんね」
「ばっ」
全身が熱くなる。
こんな子どもにからかわれて、羞恥して調子が狂う。
「さっさと帰れ、無神経なくそガキが」
「もう消灯時刻ですからね、小松崎先輩が点呼に来る前に帰ります」
その名前にまた反応してしまうあたり、学習能力がないなと自分でも思ってしまう。
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