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パーフェクト・ルーキー
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情事の倦怠感は翌朝に来るらしい。
早く着きすぎて誰も出勤していない職員用喫煙室で煙草を蒸かす。
下腹部に妙な怠さがあった。
「おはようございます」
「へぁっ!?」
背後から急にかけられた声に、うっかり煙草を落としそうになる。
振り返ると、寝起きの覚め切らないかすれた声の冴島がいた。
情事のあとのかすれた声でおはようなんて言われたら昇天しちゃうよな。
「お、はようございます」
唇に煙草を押し付け、目をそらして呟く。
「随分早いんですね、華村先生」
「目が、覚めてしまって……」
はにかむ朔良の脳内ベッドで半裸の橘と冴島がいちゃつく。
腰の立たない橘を組み敷いて、かすれた声で「昨日はあんなに欲しがったくせに」なんて囁く。
橘の顔が上気して、「もう、朝練いかなきゃハナちゃん、来るし」なんて言う。
「櫻井」
喫煙室の窓からグラウンドを見下ろして冴島がつぶやいた。
体がそれに過剰反応を起こして冴島に倣って窓の外を見た。
『華村先生だって、櫻井の相手をしていて、朝練には遅くなるさ』脳内の冴島まで橘にそんなことを吹き込む。
甘い妄想の中にあの激情を点した眸が浮かんだ。
『先生が好きだ』
そう躊躇いなく言った声が、耳の奥で聞こえる。
「あいつ、来るの早いなぁ」
冴島はふふと笑い、煙を吐き出す。
確かに。
まだ6時前だというのにカラーコーンもラインカーもそろえて、陸上ラインの補正までしている。昨日も、下心があってか否か知らないが最後まで残って後片付けをしたのは結果的に櫻井だった。一年だから当たり前っちゃ当たり前だが、ほかの一年より早い。
「何考えてるかわからないですよね」
「え、」
櫻井の姿を見ていたために反応が遅れた。
冴島は近い位置に立ち、耳元で囁く。
―――そういえばこの人もキケンな人種だった。
今更警戒して身を離そうとしても遅い。
肩にかけられた左手が、退くのを阻む。
「櫻井です」
触れるほど近くに寄せられた唇が、吐息を孕んで囁く。
昨日イタズラされた場所がゾクゾクと疼く。
「ぅわ、」
腰が抜けそうになって冴島の大きな手がそれを支えた。
「朔良先生も、あいつにナニかされちゃった?」
大人の悪い笑みで冴島が笑う。妖艶な笑みにまたゾクゾクと腹の中が疼く。顔が熱くて視界が滲む。自分が発する熱のせいで眼鏡が曇った。
「お、生徒会長も来たな」
学ラン姿に別々のデザインのエナメルバックをぶら下げた痩身が二つ、グラウンドに入ってくる。一人はグラウンドに向けて一礼し、ひとりはぐんっと大きく伸びをする。
その姿に思わず朔良は眼鏡を外し、レンズを擦った。
「同じ顔じゃないですか?」
「同じ顔だね」
冴島は極めて何事も無いようにいう。
視線の先にある痩身は、確かに昨日、朔良の部屋に来た啓太の姿だった。
しかし、グラウンドにいる啓太は2人いた。昨日来たのは一人だったはずなのに。
「2人いますよね」
「惜しいね、実は3人いるんだ」
思わず口を開けて冴島を見た。
「松田3兄弟は三つ子だよ」
三つ子なんて珍しいもの、朔良は初めて見た。
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