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-23- 姫路 梓
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全部バレた。
はずなのに、何故か上野はボクの手をとって微笑んでいた。
「手、振りほどかないんですね」
「え……?」
何が何だか分からないまま図書室から出て来てしまったボクは、上野に手を引かれ外に出ていた。少し歩いたのだろう、図書室があった校舎と離れ、本校舎を繋ぐ廊下に出てた。まだ授業中ということもあって、人気が一切なく静かだ。上野は立ち止まると、するりと手を離し振り返った。
「紫月くんから聞いたでしょ」
あっけらかんと話す彼は自然で、真の名前を出されるまで何の話をしているのか分からなかった。だって、まるでたわいのない話をしているかのようで。
「それって……」
ぼんやりと聞き返すボクに上野は少しだけ苦笑した。今思うようなことじゃないと分かってるんだけど、あ、ちょっとかっこいいな、なんて思ってしまった。
「俺が先輩以外に恋人がいるって話」
「信じないよ」
「………」
「上野は、上野は、ボク以外に恋人なんていないでしょ?」
必死すぎて、心の内で慣れしたんだ呼び方になっているのにも気付かない。
ボク以外の恋人なんていないって思ってるのに、心臓がバクバク鳴ってさっきよりずっと胸が痛かった。嘘がバレるより遥かに、上野にボク以外に恋人がいるって言われる方が怖いのだ。それなのに、
「いるよ」
さらりと口にした上野に全く動じる様子は無かった。それどころか、さも当然とばかりに堂々としている。
「そう、だよね……て言うか、ボクがこんな事聞くなんて……」
本当、図々しい。ボクだって上野を今まで騙していたのに、そんなボクが悲しいって思う資格なんてない。そう思うのに、思いと反して涙が次々と溢れてくる。どれだけ拭っても止まってくれない。それどころか、段々イライラしてきて、訳も分からず泣きじゃくってしまう。みっともなく泣き続けるボクに上野は、ふふっと微笑むと、泣いてる子供をあやすように指で涙を拭った。触れてる部分があまりにも優しくて、勘違いしてしまいそうになる。
「先輩は俺のこと好き?」
ああもう、どうしてそんな事聞くの。答えなんてわかりきってる。
「好きだよぉっ、ばかっ、このボクがこんなにっ…ひぅっ…想ってやってんのにぃ…!」
ファースト・キスこそは真だったけど、ボクの大切な初めてはお前に捧げたんだよ。それに上野とのエッチから、ボク、思い出しては一人でシちゃうようなエッチな子になっちゃって……なのに、全然イケないし! 恥ずかしいけど、お前じゃなきゃダメな身体になってるんだよ!
どうしてくれんの、今更、実は他に恋人がいましたーなんて言われても困るんだけどっ!
「そっか、良かった」
何が良かったのさ、上野は馬鹿なの?
「ぜんぜんっ、よぐないっ!! ──んぅっ……!」
反論しようと顔を上げたら、唇を重ねられた。真にさっきされた強引なキスとは違って、優しいキス。振り払おうと思えば出来るのに、全くそう言う気が起きない。それどころか、目を閉じて自ら受け入れてしまう。しかし小さく口を開いた途端、見計らったように上野は離れた。
「んっ…はぁっ、な、何で」
「ムカつくんだよね」
今まで見たことない冷めた顔をしていて、ゾクッと背筋が震えた。
「先輩さ、心も身体も俺のモンになってるのに、どうして他の奴にキスなんかされるわけ?」
声音は穏やかだけれど、間違いなく怒っている。怖くて身を引こうとするが、それよりも早く足の間に上野の足が入ってき、息を詰まらせた。
「ン、上野っ…」
キスだけで既に反応してしまったソコは、太ももを押し当てられただけで達してしまいそうになる。きっと、それに上野は気付いていて態と──頭上で、上野が小さく笑ったのが分かった。
「て言うか先輩こそ、俺に恋人がいたって知っても、もう俺のこと手放せないでしょ」
「ふぁっ、ふっ…!」
「先輩は今まで通り俺を好きでいなよ。大丈夫、先輩も俺の大事な大事な恋人だよ」
ちゅっと軽やかな音を立てて額にキスをされる。
唇にしてくれたら、ボクは甘んじて上野の言う通りになってやるのに。
ああ、でも。
「すき、上野ぉ…お願い、キスしてぇ…」
結局、ボクから求めてしまう時点で、上野の言う通り手放すことなんて出来ないのだろう──
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