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「会長ってやっぱりお金持ちなんスね……」
校門前に横停めされている黒塗りの車は見ただけで分かる高級車で。その上、中から出てきた黒服の男に恭しく頭を下げられて萎縮してしまった。
漫画で出てくるような典型的なお金持ちって本当にいるんだなぁ。
「伊吹、こいつを家まで送っていく。おい、何をしている早く乗れ」
「あっ、はい! し、失礼しましゅ!」
俺なんかが本当に乗っていい車なのだろうか。緊張しすぎて動きも言動も変になる俺に、会長は怪訝な顔をしたがそこは許して欲しい。
「えーっと、会長のお父様は何をされている人なんですかね?」
車に乗って数分、道案内以外に発言していない俺は静かすぎる車内の圧力に耐え切れず口を開いた。何か話してないと緊張で気絶しそうだ。
「何って普通の会社員だが」
「普通の会社員はこんな高級車持っていないし専属の運転手も居ませんからね?」
「そうか」
そうか……って。あれ、今ので会話終わり? いくら待っても続く言葉はないし、会長は既に視線を車窓の外に向けている。もしかして、家族の会話はNGだった? 心なしか空気も重い。
「あの、会長」
「……なんだ?」
「今日は色々と迷惑掛けてすみませんでした。それとありがとうございます」
「妙にしおらしいのは緊張してるせいか? 気味が悪いな」
「ちょっと! 人が真剣に言ってるのに気味が悪いって……」
酷い、そう言おうとした言葉は消えた。いや、消されたと言った方が正しいのか。……会長の唇によって。
突然のことに状況を理解するよりも早く、その柔らかい感触はすぐに遠のいた。
「か、いちょ……」
「今日はよく頑張ったな。褒美だ」
呆然とする俺に掠れた声でそう言う会長は壮絶に艶めかしくて。
上野咲舞、恋人絶対主義として自ら誓った誓約も虚しく恋人以外に唇を奪われたのはこれで二人目だって言うのに、その操立てさえどうでもよくなるほど目の前の会長は色っぽい。色っぽすぎる。
素直に言おう。……勃った。
「……おい、上野」
「やめて会長。触れないで。本当、死にたくなる」
喉を振り絞り硬い声を出す。
これ以上はやばい。自分の恋人以外に心を揺り動かされるなんてそんなことはあってはいけない。
そもそも、この反応も緊張のせいだ。勉強して疲れたのも原因か? そうだな、その二点だ。なーんだ別に会長にキスされたからって勃ったわけじゃないんだなぁ。あー良かった。
「……なに?」
自己完結しようとした矢先、ぐわしっ、といきなり頭を掴まれた。
「か、会長!? いたた! 髪の毛禿げる……!」
「ほーう。俺に触れられたら死にたくなるほど嫌だと」
「へぁ!?」
え、ええ、何が? あれ、なんで会長の目が据わっているの?
「伊吹、この後の予定は?」
「特にございませんが」
「なら良い。少し遠回りしろ」
「畏まりました」
ん? なんで遠回り? 俺は早く帰ってこれ何とかしちゃいたいんだけど。自分でするのは好きじゃないけど仕方ないから……
「ンッ!」
「ふん、ちゃんと反応するじゃないか」
「か、かか会長〜〜? 待って待って、ウェーイト、どこ触ってるのかなぁ〜〜?」
会長の白い綺麗な指が見間違えでなければ(見間違えであって欲しいが)俺の大事な部分に触れているような……。え、本当なにこの状況。
「犬の分際で主人を拒むとは……。まだ立場を理解していないようだ。躾が必要か」
「え、なに言っているのか分かりませ……ギャア!」
ギュウウッと握り込まれ、痛みのあまり目ん玉飛び出るかと思った。
「いぎっ、かいちょ、離しっ、下さっ……痛っ!」
「犬の粗相を手伝うのも主人の役目。だが、俺が許可するまで出すなよ。理解したか?」
一向に弱まらない手の力に、痛みで何も考えられない。訳が分からないままコクコクと頷いてしまう。
その瞬間、ニヤリと笑った会長の瞳が妖しい赤に染まったような気がした。
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