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6月26日(金) 開幕
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そして迎えた、体育祭当日。
気持ちの良い青空が広がる、少し気温の高い朝。
「行くぞ、柊」
「ちょっと待って!!」
体操服姿の雪町が、洗面所に顔を出す。
鏡の前で、同じく体操服姿の僕は必死に髪をセットしていた。
「何してんだ…」
「ちょっとだけ!ちょっとだけ固めさせて」
「あんまり派手にすると先生に怒られるぞ」
「派手にはしないって」
雪町は呆れた顔をして、じーっと俺を見る。
「ん、何?」
両手で髪を触りながら、僕は振り向いた。
「いや、別に…」
雪町がふいっと顔を逸らす。
「……?」
…なんか、顔が赤かったような。
「って、待って待って!」
さっさと部屋から出て行く雪町を、僕は慌てて追いかけた。
手ぶらで寮を出た僕たちは、直接校庭へ向かう。
「雪町は、何に出るんだ?」
並んで歩きながら、僕は雪町に声をかけた。
「リレーと借り物競争と、騎馬戦」
「そんなに!?」
このまま、昼休みまで俺たちが校庭から離れることはない。
「出てくれって、体育祭実行委員に言われたんだ…俺は玉入れに出たかったのに」
「おまえ、頼まれると断れない奴なんだな」
「うるさい」
今日は一日中教室が締め切られ、入れるのは食堂だけ。
「柊は、何に出るんだ」
「借り物競争と棒倒し!借り物競争は雪町と一緒だな!」
…でも、どうして雪町が借り物競争に?
吸血鬼は運動神経が人間よりかなり良い。
その理由で、リレーと騎馬戦に出場させられるのは分かる。
けれど、借り物競争は正直言って運動神経が悪い人向け。
わざわざ頼んでまで雪町に出てもらう理由は───。
「───おい、おまえのクラスはあっちだろ」
「あ!ほんとだ、ぼーっとしてた」
「…ったく」
雪町がため息をつく。
「じゃあ、また昼休み!」
「あぁ」
僕は雪町に手を振り、自分のクラスの応援席へ向かった。
「しゅーうー」
応援席には、雛貴の姿があった。
ちらほらとクラスメイトの姿もある。
…まだみんな来ていないのだろうか。
「もうみんな並び始めてるよー」
雛貴は僕に手を振りながら、トラックの方を指した。
……あ、みんなもう行った後か。
運動場の真ん中に、同じ体操服を着た生徒たちが並んでいる。
もうすぐ開会式が始まるからだ。
「行こう、柊」
「あぁ、待っててくれたのか?」
尋ねると、雛貴は苦笑いで首をすくめた。
「いや、紫鶴が寝坊して…僕も今来たところ」
「なるほどな」
僕たちは、駆け足で列に混ざる。
「なんか今日の柊、かっこいいね」
「え?」
「じゃあね」
それだけ言うと、雛貴は手を振って離れて行った。
背の順だから、雛貴はかなり前の方。
「よっ」
僕の真後ろは、ほぼ同じ身長の仙座だ。
「なんか今日かっこいいな、髪」
「え、かっこいいか!?」
「おーおー、イケメンイケメンー」
───そうか…かっこいいのか。
「はっ!」
───まさか雪町の顔が赤かったのは!!!
「この髪型か!!!」
「!?…急に叫ぶなよ」
「今日の僕の髪!かっこいいのか!!」
僕は仙座の肩をつかんでゆっさゆっさ揺らした。
「…テンション高いなー、さっき言っただろ」
「………」
…雪町、かわいいなぁ。
「何にやけてんだよ」
「いや…っ、あはっ」
「きもちわる」
こうして、僕たちの体育祭は幕を開けた。
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