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【図書館で過ごす夏】わとよぴ
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注意!
・年齢操作あり、よっぴーさんが高校生、わとさんが図書館の司書をやっています
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図書館のカウンターの席に腰をかけ、髪を少し指で絡める
静かで、エアコンの効いた涼しい館内
時折、本を借りようと専用カードと本を一緒に持ってくる子の貸し出し手続きを行う
大半が学校帰りに絵本を読みにくる子供達で、ありがとう!と輝かしい笑顔で笑いかけ、図書館を出て行く
あとは就職先の資格を取るために勉強する就活生だとか、資料をまとめにくるサラリーマンだとか
いろいろな職業の人がここに集う
窓の外ではけたたましい蝉の声が響いているだろう
だけどここは、外から遮断された場所
夏でも、ここにくればうるさくないし、涼しいし快適だ
お互いに絵本を選んで読み合わせる子供たちを眺めていると、ガチャッと図書館のドアが開く音が聞こえた
入ってきた人の姿を見て、俺はパァッと目を輝かせた
彼は俺の前を通ると、こんにちは、と小さく頭を下げて挨拶した
「今日も来たんやね」
「まぁ、はい。
勉強してますので」
「そっか」
彼はそう言うと、鞄の中から分厚い2つの本を出して、カウンターに置いた
俺はそれのバーコードの読み込みをすると、返却完了のパソコンを見て、彼に微笑みかけた
「この問題集もう読み終わったん?」
「はい。ですけど、つい自分で買ったやつの癖でマーカー引きそうになったんです。
一応チェックはしたつもりですけど...」
「どれどれ?......うん、大丈夫そうやね。
にしても、すごいなぁ...今の受験生って、こんなものまで使って勉強するんやね。
俺勉強する気さえ起きんかったもん」
「...そうなんですか?」
「うん。
じゃあ、この本は棚に戻しておくから。
お目当ての本見ておいでよ」
「わかりました」
彼はそう言って、奥の問題集の多い本棚へ向かった
彼は高校3年生で、よく大学の試験の問題集などを見に来て、気に入ったのがあればそのまま借りたりする
ブレザーの制服を見ると、ここの近くの高校だろう
それにしても、夏のこの時期からもう受験勉強なんて、意識の高い子だと思った
俺は隣にいたもう一人の司書にカウンターを任せ、席を立つ
彼の返した本を抱えて、資料本の棚へ向かう
背表紙に書かれた番号を確認すると、俺はその場所へ本を並べた
そして、彼の向かった問題集の棚へ向かう
そこには、真剣な表情で本を手に取り、ページをめくる彼の姿があった
俺の気配に気づき、彼は本から目を離し、俺に視線を向ける
「...良いんスか、仕事ほったらかして」
「いんやぁ、司書はこうやって図書館を回って、使用客の様子を見るのも大切なんよ。
...ていうのは、君に会う為の口実やけん」
「そうですか」
図書館なので、少し小さめの声で話す
俺は彼の隣に立ち、本を覗く
「何か良いのあった?」
「...そうですね、今は数学の問題集探してるんですけど、歴史で良さそうな資料見つけたので、取って見てたんです」
「数学かぁ。
あ、じゃあこの本とかお勧め。
解説とか丁寧に載ってるし、公式なんかも載ってるから便利だと思うんやけど」
俺が近くの棚の上から2番目の場所から一冊の厚い問題集を取り、少しペラペラとめくって中身を見せてみる
それを覗き見る彼は、あぁ、と相槌を打った
「良いですね、借りても良いですか?」
「うん、ええよ」
「ありがとうございます」
彼はそう言って、自分の荷物の置いた席に戻る
俺もカウンターに戻ると、いつものように子供たちの貸し出しを行う
正直言って、俺は彼の事が気に入っているのかもしれない
落ち着きがあって、勉強熱心で
彼の様子を見ていると、どうしてももっと近づきたくなる
何なんだ...この気持ちは、気持ち悪い
大の大人が高校生に抱くような感情ではないだろう
俺はぺちぺちと自分の頬を叩く
すると、近くで本を選んでいた子がその様子に気づいて、首を傾げた
「おにーちゃん、どうしたの?」
「ん?いやぁ、ちょっと悩みごとっちゃけん。
心配させてごめんなぁ。
あと、お兄ちゃんって歳でもなかね」
「えー?わたし、おにーちゃんは20さいくらいに見えるよ?」
「えへへ、ありがとう」
俺はその子にちょいちょいと手招きして、近づいてきたその子の頭を撫でる
すると嬉しそうに目を細め、可愛く笑ってくれた
そして、その子はじゃあね、と言うと、絵本のコーナーに戻って行ってしまった
「...20歳に見える、かぁ」
...たった2歳差
いや、何考えているんだろうか
年齢差など気にして、何が気になるっていうんだ
俺は首を振ると、集中して仕事に戻った
2時間ほど経って、子供達も家へと帰って行き、退屈な時間が流れる
その中で、ふと目を離していたカウンターに、本を置く音が聞こえた
「はいはーい」
軽い返事をしてカウンターに戻ると、彼が2つの問題集をカウンターに置き、鞄をゴソゴソと漁っていた
彼は鞄から自分の貸し出しカードを取り出して、本の上に置く
顔を上げて俺と目が合うと、表情が柔らかくなった
それに俺も釣られて笑う
バーコードを読み取って、貸し出し完了すると、彼は問題集と貸し出しカードを鞄の中へ仕舞う
「それじゃあ」
彼はぺこっとお辞儀をすると、図書館の出入り口へと向かおうとする
それを、彼の腕を掴んで引き止めた
不思議に思ったのか、首を傾げてくるりと振り返る
俺は、少し高鳴る胸を気にせず、彼に笑顔でこう言った
「名前、何て言うん?」
これは、どこにでもあるような図書館での夏の話
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