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スズヤの抱く学校とは、勉学に励み将来を必死に考える、競争し合う小さな社会のこと。
では現在、この場所は何処なのであろうか。
認めたくは無いがここは、まぎれもない学校であった。ただ、少しばかり一般から外された不良高校なだけな話しで、肩書きは立派な高校なのだ。
授業内容が足し算、かけ算、漢検5級程度だったとしても、先生が目の前で殴られようとも、ここは正真正銘の高校であると何度もスズヤは心の中で言い聞かせる。
授業らしい授業など行うはずの無い教室後ろ角の窓際で、持参した分厚い参考書をため息混じりで開く。無論、足し算でもかけ算でも無く、大学進学用に用意した参考書。
先週行われたテストの結果で「スズヤ君はオール百点だぞ!」と先生は鼻を高くしていたが、むしろ小学生レベルの問題で百点を取ら無い方がどうかしていると思うのはどうやらスズヤだけのようだ。
「将来の夢は?」と問いかければ「楽して生きること」と答えそうな生徒達に囲まれ、早1ヶ月。自身が社会のズレにいるのか、それともこの学校が社会のズレにいるのか、真偽が判らぬほど少しずつこの高校に毒させられて行くのがわかる。
「廊下で喧嘩がはじまったぞ!」
このように、授業中でも御構い無しに喧嘩を起こし、観客は雄叫びを上げ動物園の猿のよう、教室と言う柵から飛び出しては大喜び。大昔、ローマではコロシアムが人の娯楽だったように、また学生達も人の痛みを楽しみとしている。
スズヤからすれば理解しがたい趣味の一つであった。
「他校が殴り込みに来たみたいだぞ!」
そう、授業中に他校が乗り込むことも、日常的によくあること……では無かった。スズヤの記憶上、今回お初にお目にかかる出来事。
危うく聞き流す所であったが、他校とはこの学校だけにあらず、この辺一帯の安全性を心底疑ってしまう。
今は平成であって昭和では無い。何故この地だけ時代が古いのだろうか。殴り込みなどテレビドラマでしかスズヤは拝見した事が無い上、このご時世でスズヤは一度たりとも聞いた事など無い。
そんな事を考えていると、ふと他校である彼らは、わざわざ何故この時間を選んだのかと不思議に思った。
最も敵や人多い授業中に他校の学生数人が乗り込むとは、彼らにそれだけの事をしなくてはならない理由があると言う事であろうかと。
そう考えたのち、自然とスズヤの脳内に一人男が浮かび上がった。
「あの阿保、次は何をやらかしたんだ」
この学校で、不良の利益となる物はただ一つ。リクトが仕切る不良チーム、黒風白雨(こくふうはくう)の存在であろう。
暴風とにわか雨の意味するこちらの四字熟語、その意味と比例するかのように、彼らはにわか雨のごとくふらっと現れては突然喧嘩始め、暴風のごとく鋭く強く。そして時間とともに、またふらっと去っていく。
彼ら黒風白雨の特徴はらリクトを含め幹部が3人、部下が10人から15人といった少人数チーム、また一人一人強いことが売りなだけに、少人数でもやりくりできる負け知らずの強豪チームであった。
「強いことは構わないが、まわりを巻き込むなよ」
なんて誰もいない教室で聞かれる心配など無い事をいいことに、兄に対する独り言をぶつくさ呟いていると、教室の引き戸が鼓膜を破く勢いで音をたてては吹っ飛んできた。
引き戸は教壇に支えられるような形となり、そして同じ制服を着た生徒が血を流しながら引き戸にもたれかかっている光景がスズヤの視界に広がる。
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