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下の階の人が怒ってきますよ
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小鳥たちの鳴き声が、遠くに聞こえる。…
室内は肌寒く、分厚い布団の中が心地よい。…
日は既に登っており、カーテンの隙間から床へと、細い微光が降り注いでいる。……
・ ・ ・
(あれ…?)
いつもの朝と違った香りの空気を吸うと、
俺はここが自分の家ではないことを思い出した。
そうだ。俺は昨日、
桐嶋さんの家に泊まったのだ。
布団の中でのそのそと体制を変えて、
時計を探した。
反対側の壁に掛かっているのを見つけて、時刻を確認する。
確認してから、首をかしげた。
……8時半、ちょっと過ぎ…
むむ、待てよ。
…出社時間は何時だったか。
やばい…
ここしばらく一滴の酒も飲めてないってのに、二日酔い並に頭がぼーっとするぞ。
俺は必死に寝ぼけた頭を回転させた。
確か、いつも規定時刻の10分前には向こうにいるから…8時50分に着いてる筈なんだけど。
8時半の現在、布団の中で丸くなってる。
と、いうこと、は… … …
バサッ
「先輩!!
どうしよう!! 俺、寝坊しました!!」
ガバッ
「何言ってんだ俺も寝坊だ!!」
802号室が、昨夜から朝から騒がしいと、
後に苦情を頂くことは間違いないだろう。
ごめんなさい先輩…
でも今、それどころじゃありません。
「あの! 熱、大丈夫ですか?
…えっと、休みますか!?」
「俺が休むと思うか馬鹿野郎!!」
投げつけられた携帯が、脱ぎ捨てられた寝巻きと共に、見事俺の頭にヒットした。
「なんでお前8時半にアラームかけてんだよ、
ぶっ飛ばすぞ!!」
うわぁしくじった!!
だからつい今目覚めたのか、通りでいつもより日が高いわけだ。
そして、またしても俺の責任である。
昨日熱に浮かされていた先輩に、なぜ自分も目覚ましをかけなかったのか、なんて責められる筈ないか。…くそっ。
「落ち着け。…
まだ、間に合う」
「ええ間に合います、ぱぱっと着替えて車飛ばしましょう」
「…だが俺はシャワーを浴びる」
「ええええぇ!!」
こ、こいつ…一発殴ってやろうか←
確かに清潔なのは良い事だし、大事な商談もあるんだろうけど…
今すぐにでも会社に向かわなきゃならない所を、ギリギリの時間を削ってまでシャワーします!?
しませんよ遅れちゃう!!
だが今は、この頑固な人を説得する時間すら惜しいのだ。…
俺は諦めた。
「~~もうわかりましたよ、
2分でお願いします!」
「俺に命令するなッ」
「懇願してるんですよ全力で!!」
遅刻と隣り合わせにして、
売り言葉に買い言葉。
舌戦じゃ勝てそうだが、起き抜けから口論してる暇はない。
俺は昨日のスーツに着替え、
仕方なく桐嶋さんが浴室に駆け込むのを黙って見守った。
そして、
彼がシャワーから上がって来たのは、
本当にたった2分後のことだった。
ーーーーーーーーーーーーーー
「お前とろそうだから俺が車出すぞ」
「あーもう好きにしてくださいッ」
「でも今から15分で着かなかったらお前のせいだからな」
「なんでだ!?」
……この上司と共に遅刻することの恐ろしさを知った、騒然たるバッドモーニングであった。
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