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超能力編
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電車やタクシーを駆使してエドガー先輩を追い、たどりついたのは町の外れの森の中。大きな建物が立っていた。
木の陰に隠れて様子を伺っていると、建物を見上げていたエドガー先輩が突然くるりと振り返り、静かな声で言った。
「アラン、そこにいるんだろ。出てこい」
「………」
びっくりして黙って固まっていると、エドガー先輩はため息をついた。
「…なんだ。いないのか」
どうやらカマをかけられたみたいだ。若干気落ちしたようにも見えるエドガー先輩がかわいくて、僕は思わず飛び出した。
「いますよ!先輩!」
「……ついてくるなって言ったのに」
「僕は先輩の助手ですから」
「助手なら言うこと聞いて家で待っていてくれ」
「そんなの嫌です。エドガー先輩のそばにいたいです!」
「はあ…」
呆れた口調ではあるけど、どことなく嬉しそうなエドガー先輩にきゅんとしてしまう。
…正直、エドガー先輩が1人で出かけてしまうのは、少し怖い。時を遡ったりゲームに参加したりしてやっと手に入れた先輩が、まだどこかに行ってしまうような気がして。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、先輩はそれ以上僕を追い返そうとはせず、隣に引き寄せてくれた。
「それで…ここはどこですか?」
「知らん。依頼人からの手紙に、ここに来いと書いてあっただけだ」
「なんか怪しいですね…。依頼人ってどんな方ですか?」
「それは……」
「先輩?」
なぜか言いよどんでいるエドガー先輩を覗き込もうとしたところで、建物の中から人が現れた。
「依頼人は僕だよ」
そう言ってにやっと笑ったのは…
「透?!エ、エドガー先輩、こんなやつの依頼を受けたんですか?」
「すまない…。断ったら何をされるかわからなかったからな」
「えー、ひどい言われようだな」
透はわざとらしくほっぺを膨らませている。
「こんなところに呼び出して、どうせまたあのゲームに無理やり参加させる気なんでしょう!お前の手は見えているんですよ!」
「ははっ、違うよ。ゲームはもう終わったんだ。この屋敷の中でね」
透は建物を指差した。
「まあ、入ってよ。話はそれからだ」
透は建物に向かってスタスタと歩いていく。
「エドガー先輩…どうするんですか?本当に依頼、受けるんですか?」
「ああ。…報酬も良かったし」
「先輩いぃ」
透を追って建物に入っていくエドガー先輩を止められず、僕は後をついていった。
透が屋敷と言った通り、建物の中は人が住める空間になっていた。大きな玄関ホール、2階へと繋がる階段、廊下の先に見える部屋たち。どうやらたくさんの人が宿泊できるようだ。
「ここは、人狼ゲームの会場だよ」
「人狼ゲーム?」
「そう。前に君たちにやってもらったゲームと似たようなものさ!」
「またあんな悪趣味なゲームを開催したんですか…」
そう言うと透は、ふっと笑った。
「違うよ。今回は、ケツとチンコの戦いじゃない。それに僕は参加者なんだ」
「……」
ケツとチンコの戦いって何だよ。
透は一冊のノートを取り出した。
「手がかりはこの日記と、ここの会場全体だ。君たちにこのゲームを解決してほしい」
「解決とは、どういうことだ」
エドガー先輩が透を睨んでいる。とてもかっこいい。
「ゲームはもう終わっていると言っていたな。どう解決するんだ」
「まあ、この会場を探索してもらったらわかるよ。期限は設けないけど、なるはやでね!じゃ、僕はこれで!」
それだけ言うと、透は煙のように消えてしまった。
僕とエドガー先輩は、ひとまず屋敷を探索することにした。
手近にあった部屋に入ると、そこにはベッドやクローゼットが用意されていて、どうやら客室のようだった。そして、1つだけ、部屋に似つかわしくないものが置いてあった。
「石像…だな」
「石像…ですよね?妙にリアルでなんか怖いです」
女性の姿をした石像が、部屋の真ん中に置いてあったのだ。
「それぞれの部屋に違う種類の石像が置いてあるとかですかね?」
「それは1人殺される度にその人物の部屋にある石像が壊されていくアレだな」
「クローズドサークル物の推理小説ですね!面白そうです!」
「他の部屋も見てみるとしようか」
少しウキウキしながら次の部屋を開けると、とんでもないものが床に落ちていた。
「し…死体じゃないですか!しかも、高所から落下したように見えます。部屋の中なのに!」
「おかしいな。血痕が床に広がっているし、床にヒビが入っている。殺された後で運ばれてきたようにも見えない」
「ちょ、ちょっと…他の部屋も探してみましょう!」
全ての部屋を探した結果、なんと9つもの死体が出てきた。客室のような部屋に1体ずつ置いてあったのもあれば、何やら大きな部屋にまとめて置かれていた死体もある。死因はバラバラで、しかもこの状況ではありえないようなものばかりだ。
「なんなんでしょう、これ…。異様ですよ。本当に僕たちと同じゲームをしたんでしょうか?」
「そうだな…あれは精神的に死ぬ者は出ても、こんな風に死人が出るようなゲームではなかったはずだ」
「この人たちを殺した犯人を見つけるのが今回の依頼ってことでしょうかね。難しそうですけど…」
「まあともかく、この日記を読んでみるか」
エドガー先輩は、透から渡されたノートを開いた。そしてそこには、信じがたい出来事が、いくつも記されていた…。
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