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私立誠藍学園は幼等部から大学院まである一貫校。
小等部から内部進学していく学生の多い進学校であり、資産家の子息子女が在籍していることが多いため、高等部の外部入学は1割程度。
そして誠藍学園高等部は共学にもかかわらず全寮制。寮は二人部屋が基本で同室者は同学年。基本3年間変わらない。
その男子寮の一室で俺は喘いでいた。
「あ……うぁ……」
全身が熱を帯び、快感が走る。
部屋に充満している精液の臭いに脳が痺れていた。自分のベッドの上で俺はぺニスを擦られ、後孔に指を入れられ、前立腺を刺激されている。頭の中が真っ白になり……
「うあ…っあああぁあっ!」
射精した。
その瞬間、甦った『前』の記憶。
と同時に自分がいるこの世界が、ゲームの世界なのだと理解した。
なんで、よりによってこんな時にそれを思い出すんだっ?
「……っ…はぁっ…あ…ンンッ」
イッたことで思考が復活するが、すぐに彼から与えられた刺激になにも考えられなくなる。
「何も考えるな。寝ていろ」
冷めているけれど艶のある瞳が俺を捉え、濡れた赤い唇が口端を上げた。
「これからが本番だぞ」
クスリと笑うと瞳が輝く。
ああ、そうだ。こいつは夢魔で、「支配の力」がある設定だった……
「はぁああぁっ…うあっ」
彼が俺のナカに入れてきた熱くて太いものが俺の中を抉る。ギシギシとベッドが軋む音が激しくなり、朱音の動きの強さを耳でも感じ始めた。
「ああ、あ…っあぅあっ」
彼がさっきまで指で刺激を与えていた前立腺を、今度は彼の強直で再び責めてきて俺の意識は朦朧とする。
これは快感のせいなのか、彼の支配のせいなのか。それさえも考えられない状態で再び射精して、あいつは俺の中に容赦なく精液を送り込んだ。
同人ゲーム、『私立誠藍学園シリーズ』というAVG。
ヒロインの犯罪グレーゾーンな行動や発言に、何故か攻略対象達が落ちていく第一作『バレンタインまでの10ヶ月』。これはプレイヤーがどれも選びたくない行動選択しかないという、とても珍しい作品だった。
第二弾『運命のクリスマス』は『ラストでいかにヒロインを陥れて学園から追い出すか』に萌えまくったゲームだった。ハッピーエンドだろうがグッドエンドだろうがバッドエンドだろうが、全てのエンドがヒロインにとってはバッドエンドという訳のわからない作品だった。
そして第三弾『背徳の皆既日食』はこのシリーズ初の十八禁ゲームだ。乙女ゲームなのに、濡れ場担当はヒロインの兄でしかもその相手は全て男という『これはどう考えてもBLだろう』と思わずツッコミを入れた作品だ。
今の俺、蘭アララギ 白夜ハクヤは『背徳の皆既日食』のヒロインの兄、である。
濡れ場担当の『ヒロインの兄』だ。
ちなみに『前』の名前は加藤 京ケイ。平凡な容姿でゲーム好きだった前の俺。
このゲームではやはりというか当然というか、前とは異なり長身のクール系イケメンが今の容姿だ。
パッケージの絵も、イケメンに描かれていた。というか、あのシリーズは内容がエグイわりに絵だけは良かったとプレイした仲間と話したことがあったな。
一見クールな俺は実はシスコンで、妹が大好きなギャップある設定だった。その妹、黒乃クロノがこのゲームのヒロインだ。
そして、その妹の攻略相手が『婚約者』『同級生』『理事長』だ。
俺はシスコン故に妹の恋の壁となり、攻略対象からは疎まれる存在になる。しかも、攻略対象の一人、菊浪キクナミ 朱音シオンは俺の同級生で、寮では同室の男。そして俺の可愛い妹の『婚約者』。その朱音が『夢魔』という設定であり、知らぬ間に俺のバックバージンはすでに奪われていて、毎晩意識がない状態で犯されているという状況、その真っ最中に記憶が戻ったのだった。
蘭家は陰陽の家系で俺は長男である。しかし跡取りではない。蘭家は女が当主となることが常で、長男であろうと男である俺は妹の秘書、護衛、使用人…要は下働きをする立場だ。
その俺が何故妹の婚約者とセックスをしているのか、といえば理由は簡単。
朱音にとって俺は邪魔者だから罰しているのだ。
夢魔である朱音は元々女を渡り歩いていた。ところが黒乃を見つけ、黒乃との子供は繁栄に繋がることが朱音にはわかった。ゲーム設定で『夢魔は生殖に執着する』となっており、故に朱音は黒乃との子供に執心しはじめた。
しかし、そこに立ちはだかったのが俺だった。俺が幼い頃に自分の力を使い切って妹に刻んだ護符が、朱音の能力を弾いているからだ。故に、朱音は気軽に黒乃の寝込みを襲うことができず、あらゆる手段を使ってわざわざ婚約者という立場となった。
しかも、護符が効いている状態では朱音は黒乃の傍にいる時間が制限される。朱音は護符の力を弱めようと必死になっているわけだ。護符の力を弱めるには俺が『妹以上に好きな相手』を見つけ、護符を新たに作る必要がある。しかし今の所妹以上の存在はあり得ず、イラついた朱音は妹の代わりに俺を抱くのだ。
『黒乃のことは忘れろ』
俺を洗脳するために、セックスで溺れている間にいつもそう囁く。
ゲームのまま進めば、最終的に朱音の手によって俺は性道具にされる。
既に俺の体は日々の朱音とのセックスで快楽に弱くなっている。ゲームでも、俺は乱交のスチルで終わっていた。幾多のぺニスに囲まれて、恍惚とした表情で全身精液に塗れた姿で舌なめずりしていた。
あれが俺の未来かと思うとゾッとする。
こんなこと、思い出したくなかった。この先何が起こるのかを理解して途方にくれた。
俺の未来はあれしかない。そして逃げようもない。
ゲームの中でも俺は逃げようとしていた。しかし、朱音の支配の力は絶大で、結局逃げることができなかった。逃げようとすればするほど快楽に溺れる結果となるのだ。
現に今もこうして朱音のセックスに溺れている。ゲームの記憶が戻り、未来がわかったにも関わらず、だ。
「白夜、黒乃のことは忘れろ」
朱音に囁かれるが、妹を可愛いと思うのは譲れない。理性で割り切れない感情なのだから、そればかりは無理だ。ゲーム内でもこれだけは朱音にも支配できない部分だった。だからこそ俺は性道具にされ、快楽の渦に落とされる。そうしない限り、朱音は黒乃を手に入れられないから。
朱音は俺の身繕いをし、何もなかったかのように部屋を出て自室へと戻った。扉が閉まる音を聞いてほっとする。もし俺が朱音の支配下にないと知れたら、真実を黒乃に告げられないように彼は全てを駆使してその時点で俺を性道具にするだろう。
夢魔にあるのは生殖欲望だけだ。そこには愛も、娼婦のような金銭の発生もない。
俺が性欲漬けになるのは十月の皆既日食の日からで、どのルートでも皆既日食の影響で力の増した朱音が、一気に俺を性道具へと叩き落としていた。
実際には皆既日食が日本で起こることは当面ないのだが、ゲーム内でのご都合、ってやつだ。夢魔が皆既日食で力が増すのも同様だ。
あのシリーズは制作者の都合が満載だったな。
ため息がこぼれる。
体を落とされた影響か、俺は朱音に惚れている。
妹は好きだ。それは家族故の愛だ。だが、朱音に抱くのは性も含めた愛。朱音から愛はけっして貰えないというのに、それがわかってしまったのに、この想いは揺るぎそうもない。
「バカだな、俺は」
尻の痛み、赤く腫れた敏感な乳首、体に散らされた赤い鬱血は、翌朝までに消えていることだろう。彼はそういった能力も持っている。
『菊浪朱音』はシナリオライターに愛されたキャラクターだと制作者のコメントにあった。あのゲームは彼のために作られたのだ。だからゲーム内、この世界において彼は全てに愛され、彼は己の望むものを全て手にいれるだろう。
朱音以外にも攻略対象がいるが、それは俺が性道具となり護符の力がなくなると朱音が黒乃を孕ませる。夢魔である朱音はそれで満足し、黒乃と結婚する必要はないと他の女に移っていく。そして他の攻略対象が黒乃と結婚する、それがこのゲームのハッピーエンドだ。
ヒロインである黒乃にとってもかなり残酷なストーリーなのだが、後々面倒と、朱音は自分と黒乃のセックスの記憶は消している。だから、黒乃も攻略対象も、黒乃の子が本当は誰との子供かを知ることはなかった。記憶操作は朱音なりの優しさだったのかもしれない。
そして俺は世界に愛されている朱音の望むものに入らなかった唯一の人間だ。
知らぬうちにセックス漬けにされ、人間として扱われず売られることもなく、夢魔の仲間のなかに調教済みとただ放り込まれるだけの存在。ただの道具。
それでも一日でも一秒でも長く朱音と共にいたいと思うのは我儘なのだろうか。支配された振りをしていれば、朱音と十月まではセックスができる。今は六月だから、後三ヶ月は一緒にいられる。
あいつとのセックスを、この身に染み込ませたい。性道具になったとき、相手は全てアイツだと思えるくらいに。
同じくらい黒乃も守りたい。黒乃が好きになり、愛した相手と結ばれるように。
そう思うのも我儘なのだろうか。
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